「ダンスブリッジ2019④旅は道連れ劇場」(セッションハウス)に行く

●2019年12月8日(日)、神楽坂セッションハウスで、コンテンポラリー・ダンス公演「ダンスブリッジ2019④旅は道連れ劇場」を観た。三つの個性的な作品が連続して演じられる約1時間20分。非日常の異様な世界に身も心も引き込まれ、呆然としながら濃密な時間が流れていく。終わった後は、心地よい疲れを感じて大きく息を吐く。実に見応えのある公演であった。

S セッションハウス 2019.12.jpg

●ダンスブリッジ・プロジェクトとは、ダンサーと観客との間に「橋」をかけ、ダンスをよりダイレクトに届けようとするもの。他にない、劇的接近性ダンスプログラム群(チラシ文言から)が演じられる。本公演は同プロジェクト2019年シリーズの最終回となる。今回は、ダンサーと観客との間だけでなく、作品の境界を越えてダンサー間にも「橋」をかけようとする意図も強く感じられた。

●三作品は単に続けて演じるのではなく、最初の作品「四人の僧侶」は、2番目の作品「七つの大罪」にバトンを渡し、「七つの大罪」は更に最後の作品「旅は道連れ」にバトンを渡すといったリレーのような形。或いは和歌で例えれば「連歌」とでも言えようか。三つの部分からなる大きな一つの作品との見方もできよう。それでは、順にその様子を見て行こう(一部敬称略)。

【四人の僧侶】

振付:笠井瑞丈
出演:笠井瑞丈、奥山ばらば、鯨井謙太郎、小出顕太郎

余りに個性的な4人のダンサーたち。黒いスーツに身を包んだ彼らは、シュールとしか言いようがない「語り」を交えながら、奇々怪々なダンスを披露する。最初は「語り」を必死に追い理解しようと試みたが、とても手に負えそうもない。すぐに諦め自然体で聴くことにした。後刻、調べたところ、この「語り」は、吉岡実氏(1919~1990)が1958年に発表した「僧侶」という詩だと分かった。冒頭の一節は次の通り。字で読んでも難解だ。

 四人の僧侶
 庭園をそぞろ歩き
 ときに黒い布を巻きあげる
 棒の形
 憎しみもなしに
 若い女を叩く
 こうもりが叫ぶまで
 一人は食事をつくる
 一人は罪人を探しにゆく
 一人は自涜
 一人は女に殺される

笠井瑞丈さんの振付は、吉岡実氏の詩と同じくらいに「シュール」だ。手と胴体と脚がバラバラに動き、全身が軟体動物のようにクネクネとし、あるいはロボットのようにギクシャクとして引きつったりピクピク痙攣したり、そして飛んだり跳ねたり決めポーズを取ったりと。クラシック・バレエのパロディのようなターンも見せる。コミカルなのかシリアスなのかすら良く分からない。確かに「変な」ダンスなのだが、見ているうちに、カッコ悪さがカッコ良く、不自然さが自然に思えてくるから不思議だ。終盤にはスーツを脱ぎ捨て、文字通り「パンツ一丁」になり、面白くも壮絶なダンスを踊る(「パンツが逆だ!」)。まさに天晴(あっぱれ)。突き抜け感が半端ではない。そして最後は、再びスーツ姿に戻った4人が7人の女性ダンサーと向かい合い、すれ違い、入れ替わった。

音楽の使い方も巧みだ。まず驚いたのは、冒頭、ショスタコーヴィチの「セカンド・ワルツ」で始まり、バッハの「ゴルトベルク変奏曲」に変わり、この後、女性シンガーによる気だるい歌、ヴァイオリン曲などが続き、最後は再び「セカンド・ワルツ」が登場する。音楽とダンスとの同調とズレとのバランスが絶妙だ。

【七つの大罪】

振付:笠井瑞丈
出演:マドモアゼル・シネマ
竹之下たまみ、蓮子奈津美、古茂田梨乃、中島詩織、須川萌、佐治静、中込美加恵

山姥のような髪型の女性ダンサー7人が踊る濃厚なダンス。彼女たちは、身体の内側から必死で絞り出し「動き」を外側に出そうとしているかのよう。その「動き」は限りなく妖しい。顔の表情は「苦悩」なのか、それとも「歓喜」なのか。また、踊る時のフォーメーションも興味深い。近づいて体を重ねたり、すーっと離れて行ったり、皆で一列に並んだり。1人ひとりの「動き」が異なるだけに、全体としての印象が刻々と変化して面白い。なお、終盤は濃厚なダンスから転じて、寄せては引く波のような「現代舞踊」風の美しい群舞になったように感じられ(私の勘違い?)、またラストのジャンプシーンも印象的だった。

「音」の使い方は「四人の僧侶」とは大きく異なる。音楽らしいものは一部に限られ、無音や心音あるいはモールス信号音の多用が目立ったが、濃厚なダンスを際立たせるという点で大変効果的であったと思う。

【旅は道連れ】

振付:伊藤直子
出演:笠井瑞丈、奥山ばらば、鯨井謙太郎、小出顕太郎、竹之下たまみ、蓮子奈津美、古茂田梨乃、中島詩織、須川萌、佐治静、中込美加恵

4人の男性ダンサーと7人の女性ダンサーがここで対峙する。何とここで聴こえてきたのが「黒の舟歌」(野坂昭如氏の歌?)だ。「♪男と女の間には、深くて暗い河がある~」という哀愁漂う歌をバックに、男女合わせて11人が切々と踊る。男性は船を漕ぐようなイメージで、女性はこれを受け入れ見守るような動き。

さらに驚いたのは、この次に鳴り出したのが「花ざかりの森」(これも野坂昭如氏の歌?)だったこと。「♪花盛りの森に、禿鷹がやって来る~」という不気味な歌が流れる中で、11人は「女女男女男女男女男女女」の順で横に並び、一人一人がメッセージを発する。この後、天井から舞う紙ふぶきを浴びながら11人は円陣を組むように行進し、最後は天井からの光を仰ぎところで演技は終了した。「花ざかりの森」の歌詞と、目の前に展開する光景とのギャップが実に心に響く感動的なラストであった。

●冒頭述べた通り、今回の公演は大変見応えがあるものであった。「四人の僧侶」は笠井瑞丈さんの振付の切れ味の良さに素直に驚き、「七つの大罪」もやはり笠井瑞丈さんの振付ということで、いつもと違うマドモザゼル・シネマの動きに目が釘付けになり、そして伊藤直子さん振付の「旅は蜜連れ」では漸く今まで親しんだマドモアゼル・シネマの世界に帰ってきたようなとても嬉しい気分。三作品とも素晴らしかったが、上演の順番もベストであった。やはり、三部構成の見事な一作品であったのかも知れない。

以上

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