アンサンブル山手バロッコ演奏会「古楽器の響きで味わうモーツァルトの協奏曲と交響曲」に行く

●2019年6月1日(土)、横浜開港記念会館講堂で開催された、アンサンブル山手バロッコの演奏会「古楽器の響きで味わうモーツァルトの協奏曲と交響曲」に行った。本演奏会は、横浜市の開港160周年を祝うメモリアルなイベント。風格ある建造物の中で聴く古楽器の音色はまた格別だ。聴き慣れたはずのモーツァルトの曲が全く新しい感動を呼び起こす。なかでも大村千秋さん(普段はチェンバロ奏者として活動)が弾くフォルテピアノが圧倒的な素晴らしさ。とても満ち足りた時間を過ごすことができた。

画像


画像


画像


●アンサンブル山手はバロッコは、朝岡聡氏を中心に結成された古楽器による演奏団体で、精力的に演奏を行っている。今日は、コアメンバーに加え、大村千秋さんを始め、広く活躍する方々も加わり、より充実したメンバーで臨む。お名前・担当は次の通り(敬称略)。なお、司会役・解説役の朝岡聡氏のトークは軽妙で分かりやすく、内容も深い。もはや「名調子」とも言うべきもので、「芸」の域に達している。

◇朝岡聡(お話)
◇大村千秋(フォルテピアノ)
◇曾禰寛純(クラシカル・フルート)
◇大山有里子(クラシカル・オーボエ) 
◇今西香菜子(クラシカル・オーボエ)
◇石野典嗣(クラシカル・オーボエ、クラシカル・ファゴット)
◇永谷陽子(クラシカル・ファゴット)
◇飯島さゆり(クラシカル・ホルン)
◇慶野未来(クラシカル・ホルン)
◇小野萬里(クラシカル・ヴァイオリン)
◇片桐恵里(クラシカル・ヴァイオリン)
◇原田純子(クラシカル・ヴァイオリン)
◇角田幹夫(クラシカル・ヴァイオリン)
◇伊藤弘祥(クラシカル・ヴァイオリン)
◇榎本憲泰(クラシカル・ヴァイオリン)
◇山口隆之(クラシカル・ヴィオラ)
◇小川有沙(クラシカル・ヴィオラ)
◇黒滝泰道(チェロ)
◇北村貞幸(チェロ)
◇飯塚正己(コントラバス)
◇和田章(フォルテピアノ)

●それでは、以下、演奏順にその様子や感想などを記してみよう。

【管楽器のための協奏交響曲変ロ長調KV.297bより第1楽章】

◇冒頭、朝岡聡氏から、この曲に登場する独奏楽器の紹介があった。いづれも古楽器なので普段見慣れているものとは随分違う。フルートは柘植(つげ)の木で出来ていて、ややくぐもった感じながら落ち着いた音色。オーボエも柘植製で、ひなびた感じの音がたまらない。ホルンはバルブがなく、ただ巻いただけのような形状。もともと狩りの先頭に立って吹いたとのことで、「アサガオ」が後ろに向いている。ポアッとした音がとてものどかだ。ファゴットは語源(イタリア語で「薪(まき)の束」どおり木の管を折り返したような形。素朴な音色が印象的だ。

◇この曲は、従来から真偽の議論が絶えないが、魅力的な曲だ。今日の楽譜は、レヴィン復元稿を元に一部修正を加えたものとのこと。演奏は、管楽器奏者4人が前面に並び、彼らを小編成のオーケストラが囲む形で行われる。個性が光るソロ楽器の響きと、それにしっかりと応えるオーケストラ。少人数だけに一人ひとりの存在感がしっかりと伝わってくる。洗練され過ぎないナチュラルさ、それが却って優雅さも感じさせる不思議な感覚。普段聴いているのとは一味も二味も違う演奏であった。

【交響曲第40番KV.550(第1稿)】

◇あまりにも有名な曲。しかし、今回の演奏は、当時のオーケストラ編成に近く、また指揮者も置かず、さらに通奏低音をフォルテピアノが担当するという古式ゆかしきスタイル。見ているだけでも、パトロンの邸宅で演奏された当時の様子が思い起こされる。

◇演奏は、メリハリが利いて歯切れよく、リズムは明確、そして終始緊張感に満ちていた。第1楽章は哀切感が際立ち、第2楽章は穏やかな中にも芯の強さ、第3楽章~第4楽章は、力強くも抑えきれない哀しさで胸がいっぱいに。モダン楽器では味わえない「ざらざらした感じ」がとても新鮮だ。

【ピアノ協奏曲第17番ト長調KV.453】

◇この曲は、まさに本日のメイン・イベント。私が敬愛する大村千秋さんが登場する。彼女が今日弾くフォルテピアノは、アントン・ワルターモデルの忠実なコピー(朝岡聡氏の説明)。大きさはモダンピアノより一回り小さく、表面は木目そのままで美しい。鍵盤は白黒が逆で、ペダルは足ではなく膝で操作する。このフォルテピアノをステージ中央に配し、オーケストラが囲む。とても瀟洒な雰囲気。大村千秋さんが身に付けた鮮やかなブルーとグリーンのドレスもとても素敵だ。

画像


◇大村千秋さんは、この曲が大好きとのこと。演奏は本当に「素晴らしい」の一言に尽きる。言葉を失うほどだ。ピアノフォルテの音色は音域によって微妙に異なるが、特に高音の煌めくような美しさは例えようもない。しいて表現すれば、水面に映った光がキラキラと揺れ動くさまか。音色だけではない。その音色を操る表現力が実に豊かなのだ。第1楽章は、オーケストラとのやり取りが心地よく、第2楽章は、しみじみと、ゆったりしたテンポの中で、フォルテピアノの繊細さや音色の美しさが一際目立ち、また木管楽器との対話が印象的、第3楽章は、可憐な旋律が様々な変奏で登場しとても楽しく、フィナーレは、朝岡聡氏の説明通り、オペラの重唱にも似た華やかで幸せなオーケストラとの競演であった。

◇アンコールでは、第3楽章のフィナーレ部分をもう一度演奏。本当に嬉しい。会場は割れんばかりの拍手に包まれた。何という幸福感溢れる幕切れなのだろう。

●今日は、普段親しんでいるモーツァルトとは全く異なる新たな体験をすることとなった。3曲とも素晴らしかったが、特にピアノ協奏曲第17番での大村千秋さんのフォルテピアノ演奏には、心の底から感動した。今一度、大きな拍手と感謝の気持ちをお送りしたい。アンサンブル山手バロッコそして大村千秋さん、本当にありがとうございました。

(余談だが)

●終演後は、会場でお会いした友人ご夫妻(ご主人は中学校同学年、奥様は高校同級生)と、ご夫妻の知人の方々(もちろん私は初対面)と楽しいお茶会。音楽とは、人と人との垣根を一瞬で取り払ってくれるまさに魔法だ。

以上

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!

ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。

→ログインへ

なるほど(納得、参考になった、ヘー)
驚いた
面白い
ナイス
ガッツ(がんばれ!)
かわいい

気持玉数 : 0

この記事へのコメント

この記事へのトラックバック