藤原歌劇団オペラ公演「ドン・ジョヴァンニ」(日生劇場)を観る

●2018年6月30日(土)、日生劇場(日比谷)で、藤原歌劇団のオペラ公演「ドン・ジョヴァンニ」を観た。本公演は、日生劇場開場55周年記念「モーツァルト・シリーズ」の第2弾でもある。優れた演出と充実した歌手陣による素晴らしい公演であった。

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●主要なメンバーは次の通り(敬称略)。なお、歌手陣はダブルキャストにつき、本日分を記載した。

◇指揮:ジュゼッペ・サッバティーニ
◇演出:岩田達宗

◇ドン・ジョヴァンニ:二コラ・ウリヴィエーリ
◇ドンナ・アンナ:小川里美
◇ドンナ・エルヴィーラ:佐藤亜希子
◇ドン・オッターヴィオ:小山陽二郎
◇騎士長:豊嶋祐壹
◇レポレッロ:押川浩士
◇ゼルリーナ:清水理恵
◇マゼット:宮本史利

◇合唱:藤原歌劇団合唱部
◇管弦楽:東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団

~演出について~

●岩田達宗さんの演出は、基本的には伝統的でオーソドックス。しかし、単にそれに止まらない。独自の美意識を強く感じさせる魅力的なものだ。視覚的には美しく、進行的には緊張感に溢れている。

●舞台上は、背後には、古い館を連想させる黒っぽい内壁があり、中央には、大きな十字架の形をした物(以下「十字架」)が横たわる。この「十字架」は、場面場面に応じて、様々な照明を浴び表情を変え、オペラの全幕を通じて、主だった出来事は全てこの「十字架」の上で起きることになる。墓場のシーンでは、舞台上方から本当の十字架も降りてきて、この舞台上の「十字架」と不気味に符合する。

●特筆すべきは、ドン・ジョヴァンニの女性遍歴を記したカタログの扱い方。岩田達宗さんは、これを舞台全体に拡がる幕状の物で表現した。この巨大なカタログの幕は、レポレッロの「カタログの歌」以降も、ゼルリーナの「ぶってよ、マゼット」、ドン・ジョヴァンニの「乾杯の歌」、さらには「最後の晩餐」の場面など、度々(たびたび)登場する。このインパクトは非常に大きい。

●また、ドン・ジョヴァンニが、冒頭の騎士長との決闘で、自らの右手に深い傷を負う設定としたことも注目に値する。彼の右手は、レポレッロが傷の手当てをした後、包帯が巻かれるが、消毒される際にあまりの痛さに「あっ」と声を上げるなど、細かい拘りに演出の強い意図を感じないではいられない。何と、上述の墓場で降りてくる本当の十字架には包帯のような白い布が掛けられ血で赤くにじんでいる。これは、ドン・ジョヴァンニ自身の運命を予感させるものなのだろうか?

●地獄落ちのシーンも見事だ。騎士長の石像がドン・ジョヴァンニに改悛を迫れば迫るほど、彼の右手の傷はより深く、痛みはより強くなっていく。そして最後は、「十字架」に穴が開き、カタログの幕が落ちたかと思うと、ドン・ジョヴァンニは、幕とともに穴に吸い込まれてしまう。

●女性遍歴にかけては、それまで連戦連勝を誇ったドン・ジョヴァンニが、決闘で傷を受けたことを境に、一転して劣勢に立たされ、最後は地獄に落ちていく。非常に説得力のある展開と言えよう。

●衣装のセンスもとても良い。男性では、ドン・ジョヴァンニは全身白でさっそうとした格好、レポレッロはまるでチャップリンを思わせる服装、オッターヴィオは濃紺の長い上着にグレーのズボン、マゼットは白いシャツにピタッとしたベージュのズボン、一方女性では、ドンナ・アンナは黒いドレス(喪服?)、ドンナ・エルヴィーラはいかにも貴族と言った感じのこげ茶の上着に光沢のあるグレー系のロング・」スカート、ゼルリーナは白のワンピース。まさに、観客が期待するとおりの衣装であり、かつマンネリ感は微塵もない。

~歌唱について~

●歌手陣は皆レベルが高い。ドン・ジョヴァンニ役の二コラ・ウリヴィエーリさんは、自由奔放な歌い方が役にピッタリ。ドンナ・アンナ役の小川里美さんは、本当に華のある方。見事な歌唱と、美しい立ち姿で観客を魅了。ドンナ・エルヴィーラ役の佐藤亜希子さんは、アリアの表現力が冴えわたる。ドン・オッターヴィオ役の小山陽二郎さんは、高音がきれいで真面目な歌い方が役柄と合う。レポレッロ役の押川浩士さんはコミカルな役どころを大熱演。このほか、ゼルリーナ役の清水理恵さん、騎士長役の豊嶋祐壹さん、マゼット役の宮本史利さんの好演も光った。

以上

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