チェルフィッチュ『ゾウガメのソニックライフ』を観る

●2月13日(日)、神奈川芸術劇場大スタジオで、チェルフィッチュの『ゾウガメのソニックライフ』(作・演出:岡田利規)を観ました。なかなか興味深い作品です。私は、演劇をめったに見ません。嫌いというのではなく、月2~3回のダンス公演にいくので時間的に精一杯なのです。今回は、たまたま、ダンス公演の際に貰ったチラシの中で、色鮮やかなこの公演のチラシに目が止まり、いわば思いつきで「いってみるか」ということになったものです。だから、チェルフィッチュについても、チェルフィッチュを主宰する岡田利規さんについても、全く予備知識はありません。以下、演劇について、全くの素人の立場から、少し様子や感想などをしるしてみたいと思います。
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●会場の神奈川芸術劇場大スタジオは、ゆったりした造りの劇場です。天上の高さがとても印象的で、ステージも広め。ステージには、しっかり段差もあります。観客席側を見れば、列と列との間に通路もあったりと、かなり余裕があって、だから、座席数は、横20席、縦10列で200席と、会場の大きさの割には少ない印象です。

●ステージ上には、観客席から見て右手に、ラグビーのゴールというか、神社の鳥居を逆さにしたものというか、金属製の柱状のものが立てられ、その前には、キャスター付の木製の棺桶状の箱があります。後方には、白いテーブルと椅子脚が置かれ、少し目を上げれば、白いスクリーンが配されています。一方、ステージ左手には、三脚に支えられたビデオカメラと、被写体となる人が座るであろう椅子が置いてあります。

●そうしたステージに、男性3名、女性2名、計5人の若者(山縣太一氏、松村翔子さん、武田力氏、足立智充氏、佐々木幸子さん)が、ごく自然に現れました。どうやら、物語の主人公は、一組の男女のカップルのようですが、彼らは、一人ひとり役柄が与えられるのではなく、いわば「多人一役」というように、一つの役柄を、次々と引き継ぎながら演じていきます。だから、役柄の性別と出演者の性別は無関係です。彼らが語る言葉は、とてもナチュラルですが、彼ら同士というよりも、むしろ観客に向いています。

●しかし、語る内容は、夢の中なのか、目が覚めているときの妄想なのか、あるいは現実なのか、判然としません。旅行に行きたいと繰り返し言う女性、職場に向かわず地中に深く進んでいく地下鉄、パーティーで知り合った男性が言う人類が定住により失ったもの、などなど、観客を翻弄しながら、あるいは煙に巻きながら、舞台は展開していきます。観る側の時間や空間の感覚も、いつもとは明らかに変わってきていて、なんだか、別の次元にいるようにも思われます。

●出演者が示す動きは、全く風変わりです。語るときの動作は、ある時は腕をぶらぶらさせ、またある時は四股を踏み、またある時は蟹のように横に歩きます。語る内容とは無関係なので、観客を当惑させますが、妙な爽快感や開放感もあります。一人が語っているときの他の者の動きも、また面白く感じます。一見、てんでに勝手な動きをしているようにも見えますが、計算尽くされているようにも思われ、目を離せません。当日配布のパンフにもあったように、発話者が重要人物とは限らないということなんでしょうね。

●テンポの取り方も独特です。語りの最中は時間が止まっているかのように感じられ殆ど時間を意識しませんが、一つの語りが終わって次の語りに移る間の「間(ま)」が、微妙というか、ぎりぎりの我慢というか、異様に時間を意識させられることになるのです。

●光はあまり多用していないとの印象でしたが、終盤に、ステージ上に立つ金属製の柱が赤く染まるシーンは、圧巻でした。文字通り、鳥居のようにも見えます。それまでが、出演者の衣装を除きほぼモノトーンの世界でしたので、強烈に印象に残っています。

●今回の公演のテーマは、「日常を捉え直す」ということだっだようです。私自身、十分に岡田氏の意図を理解できたかどうか自信はありませんが、「なるほど、こういう手法もあるのか。演劇という表現方法には、まだいろいろ可能性がありそうだな」と気付かされ、また「日常」について、今一度考えてみる良い契機になったとも思っています。

●余談ですが、本公演は、東京だけで、2月2日から2月15日まで計15回もあります。一回200席として、もし今日のように全て満席であったとしたら、延べ3000人の観客動員となります。私が良く観るコンテンポラリーダンスでは、コンドルズ等の一部の人気カンパニーを除き、考えられません。やはり、日本の演劇ファンの層は厚いと感心しました。

以上

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