「東儀秀樹トーク&ライブ」(スターツおおたかの森ホール)に行く

●2019年11月23日(土・祝)、スターツおおたかの森ホールで開催された、「東儀秀樹トーク&ライブ」に行った。このコンサートは、本年4月、流山おおたかの森駅北口に同ホールがオープンしたことを記念して行われる企画の第8弾だ。東儀秀樹さん(以下「東儀さん」という)は日本を代表する雅楽師。日本の伝統文化である雅楽にしっかり足を踏まえつつ、且つそれに止まらず、古今東西、時間と空間を自在に行き来するユニークな音楽表現に圧倒されるばかり。独特なユーモアセンスが溢れるトークも実に面白い。今日は、想像をはるかに上回る素晴らしいパフォーマンスに接し、とても充実した時間を過ごすことが出来た。

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●それでは、演奏や合間のトークの様子や感想などを、演奏順に記してみよう。なお、演奏は、東儀さんの笙(しょう)、篳篥(ひちりき)、竜笛(りゅうてき)の生演奏に、様々な楽器で奏でられる伴奏(録音)も加わる。

1.越天楽幻想曲

東儀さんは舞台下手前の客席用入り口から静かに笙を吹きながら「狩衣」姿で登場した。会場からは大きな拍手が沸きあがる。黒い烏帽子、白の狩衣に紫の袴がとても凛々しい。しばらく進んだのち、おもむろに舞台に上がる。聴こえてくるのは越天楽のメロディ。すると今度は篳篥に持ち替える。笙が雲間から太陽の光が差し込むイメージだとしたら、篳篥はビーっという振動感ある音色。

~曲が終わると東儀さんの「面白くてためになる」話が炸裂する。「狩衣」は平安時代の貴族の普段着で、そのままの服装で狩りにも出かけたのでこの名がついたとのこと。ここで楽器の紹介。笙を指して「これがショウ」、篳篥を指して「これがダイ」、竜笛を指して「これがチュウ」。さすがに「チュウ」の所で客席から笑い声が起きる。東儀さんはすかざず「気付くの遅すぎ。この地域の人は少し心配だな、でも半分以上のひとが〈ああ、そうか〉と納得する様子を見るのはとても気持ちがいい瞬間」と言って会場は爆笑の渦。さらに「篳篥の字は箪笥(たんす)に似ている」で笑い声。一瞬おいて「でも笑えなかった人は箪笥の字を知らない人」で、またまた大爆笑。続いて真面目な話。笙は複数の音を同時に出せ、また吹いても吸っても同じ音が出る。起源は古く、大陸からヨーロッパに渡り、パイプオルガンやアコーディオンのルーツになったとも言われている、とのこと。なるほどと頷く。

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2.光降る音

東儀さんが「笙は鳳凰の化身である」旨を描いた絵本からイメージして作った笙のためのオリジナル曲。静寂さ、清らかさ、そして気品が感じられ、不思議と心に沁みる。目をつぶれば。きらきらとした光の波紋が瞼に浮かぶ。

~ここでまた東儀さんから貴重なお話。ドレミの音階は西洋のものと思われているが東洋にも3000年前からあった。雅楽の音階もこれに該当する。一般に日本の音階は、江戸時代に「わびさび」の考え方から、削ぎ落とされ5音になったとのこと。それは、知らなかった。本当に勉強になる。ここでまた東儀さん流のジョーク、「ぜひ皆さんも知ったかぶりしてみて」が飛び出し、どっと会場が沸く。

3.即興演奏(龍笛による)

龍笛(りゅうてき)は尺八のような音色。かすれる音も実に美しい。さすが「龍の笛」。自由に飛び回る龍の趣。

~笙が「天の音」、篳篥は「地上の音」であるのに対し、龍笛は空間を象徴する。雅楽は人の息吹を含めて表現するもの。それを雑音と思うか、人の心が含まれてると思うか。東儀さんの説明に思わず唸ってしまう。うーん、奥が深い。

~今日11月23日は勤労感謝の日だが、古くは新嘗祭と呼ばれたもので、五穀豊穣を祈る祭礼。なお、大嘗祭は元号が変わって最初に行う新嘗祭のこと。だから雅楽を聴かせる相手は神様になる。「お客様は神様です」とは違った意味で。と意外な所で冗談が入り、会場大爆笑。「ためになる話」の直後に飛び出すジョークのセンスに脱帽だ。

4.浜辺の歌

篳篥による演奏で日本の抒情歌から一曲。心が豊かになり、ほっとし、リラックスする。ちょっとかすれたトランペットのような音色が心地よい。しみじみ且つドラマチックな演奏であった。

~ここで東儀さんから切なる訴えが。日本の抒情歌は美しい日本語が綿密に計算されて並び、一言一言に日本の心が描かれていて、温かい気持ちになる。しかし、今、音楽の教科書から、この抒情歌が姿を消そうとしている。言葉が難しくて子供が分からないという理由で。穏やかに言っているけど実は大変怒っている。という内容。全く同感である。

・・・・・休憩・・・・・

5.JUPITER

第二部では、東儀さんは黒いジャケットに黒いズボン、白いドレッシーなシャツで登場。まずは名曲「JUPITER」を披露する。最初は笙で途中から篳篥で。ビートが利いて力強くシャープな演奏。原曲(ホルスト)や平原綾香さんとは一味違う宇宙的な広がりが感じられるよう。

~「普段着の狩衣から着替えました(笑)」とまず冗談を飛ばし、続いて真面目な話。音楽はジャンルに関わらず楽しむことが大事。古典に関する表現に揺るぎがないからこそ、別のジャンルへのチャレンジもできる。東儀さんだけに重みのある言葉だ。

6.ハナミズキ

篳篥による演奏。音色の変化、メリハリ、そして盛りあがりが半端ではない。装飾的な演奏もとても魅力的だ。自由自在にメロディで遊ぶ。まるでサクソホンのコンサートのような華やかさ。

~ここで楽器伝来の話。雅楽の楽器は1600年前に大陸から伝わったが、その大陸には今は何も残っておらず、あるのは日本だけ。ルーツを継承する責任と誇りを感じている。えっ? そうだったのかと驚く。

7.蒼き海の道

笙、篳篥、龍笛、そして再び篳篥と楽器を替えながら演奏をつないでいく。それぞれの特長が最大限生かされていて聴きごたえがある。素朴で分かりやすい旋律だが、雄大でスケールの大きい曲。雅楽が大海原を渡って伝来したとの思いで作曲されたのだろうか。

~ここで東儀さんからバックに流れる録音の音楽についてコメントが。私がずっと気になっていたことだ。バックの演奏はピアノ、ギター、ドラム、シンセサイザー等だが、全て自分で演奏した音を重ねたものとのこと。やっぱりそうか。本当に凄い才能だ。

~東儀さんの話はさらに続く。音楽を習ったのは雅楽だけ。しかも19歳から。それ以外の楽器は全くの自己流。でも音楽家になれた。音楽大学に行かなくても、自分を信じて自分の道を進んでいけば、いつの日か目的地に着くことがある。他人と同じ道を歩むことへ反発することに潔さと誇らしさを感じている。

~自分も今60歳。(ここで会場から驚きの喚声) でもまだ自分が知らない自分がある。死ぬまで自分を探していきたい。そうしていることが生きていること。そう爽やかに言い切る東儀さんは本当にカッコいい。

8.即興曲(ピアノ演奏による)

~せっかくピアノがあるから弾いちゃおうかな

ということで、次はピアノの即興曲。しかし驚いたのはその趣向。4人の観客が1音ずつ選んだ4つの音(ミ、ファ、ソ、ラ)だけを使って即興曲を弾き始める。流れるような、あるいは弾けるような、あるいは優しく語るような、そしてあるいは光がきらめくような音の移ろい。見事な指さばきに驚くばかり。

~東儀さん曰く「常に今の一瞬を大切に」

9.枯葉

シャンソンの定番「枯葉」を篳篥で演奏する。かすれた篳篥の音が「枯葉」にぴったり。と思いきや、今度はピアノに移る。軽々な変奏も巧みで、ジャズ風にも聴こえる。賑やかな中にも本来の哀愁も。

10.誰も寝てはならぬ

有名なプッチーニのオペラ「トゥランドット」からの一曲。はじめは笙、続いて篳篥で。情感溢れる素晴らしい演奏だ。圧倒的な高揚感にため息がでそう。

~感動的な曲が終わり一息ついたところで、「大事なお知らせをするのを忘れていた」として、今後のコンサートの予定等の紹介があった。観客はアンコールを期待する中、「では、さようなら」。会場からは「ええっ?」の大合唱。すると、これに応えて「じゃあ、もうもう一つの大好きな抒情歌を」とあり、大拍手。

11.仰げば尊し

~この曲は、自分の歩んできた道を優しい気持ちで思い起こさせ、感謝の思いが沸き上がる。

と一言つぶやいた後、アンコール曲が始まった。楽器は、篳篥、笙、そして再び篳篥。落ち着いた心休まる究極のヒーリングソング。今日のコンサートを締めくくるに相応しい名演奏であった。

以上


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