アーリドラーテ歌劇団第7回公演《マクベス》を観る(シアター1010)

●2019年10月19日(土)、シアター1010(北千住)で、アーリドラーテ歌劇団の第7回公演《マクベス》を観た。歌手陣、合唱、オーケストラの熱演に加え、光と影を駆使した演出も効果的で、さらに挿入されるダンスシーンも秀逸と言う、とても見応えのある公演であった。

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●アーリドラーテ歌劇団は山島達夫氏が代表・指揮を務めるオペラ団体。ヴェルディの作品上演に特化していることが最大の特長であり、魅力でもある。2011年の旗揚げ以降、「ラ・トラヴィアータ」「仮面舞踏会」「リゴレット」「ドン・カルロ」「イル・トラヴァトーレ」「ナブッコ」と実績を重ね、今回の「マクベス」は7作品目となる。なお、山島達夫氏は弁護士の顔も持つ。しかも有力ロー・ファームの一つ渥美坂井法律事務所に所属する極めて優秀な方。同氏の才能にはただただ驚嘆するしかない。

●まずは今日の主だったメンバーを確認しておこう(敬称略)。

指揮:山島達夫 演出:木澤譲 振付:能美健志
マクベス:清水良一 マクベス夫人:斉藤紀子
マグダフ:青栁素晴 バンクォー:志村文彦
マルコム:山田幸隆 医師:高崎翔平
従者・伝令:室岡大輝 侍女:栗田真帆
刺客:西崎俊文
亡霊:吉永研二、渡辺藍子、吉田望弥
魔女Ⅰ:稲村麻衣子、小松原利枝、清水智子
魔女Ⅱ:新藤清子、田中由佳、秋山淑恵
魔女Ⅲ:筒井直子、桝田慶子、黒崎朋子
合唱:
テアトロ・ヴェルディ・トウキョウ・コーラス
管弦楽:
テアトロ・ヴェルディ・トウキョウ・オーケストラ
ダンス:ダンステアトロ21
(長谷川まいこ、中西涼花、武藤桜子、川上愛以、重野ひかり、大瀧彩乃)

●続いて、演出、歌唱・合唱、ダンス、オーケストラについて見ていこう。

<演出>

◇木澤譲氏の演出は極めてシンプルだが象徴的で奥が深い。舞台装置というべきものは、基本的には大きな白いボード(4m×6mほど)のみ。あとは、場面に応じて、第2幕で金色のシートを敷き詰めた巨大なテーブル(これもボードを使用か)、第3幕で数本の長い板(20㎝×180㎝)や数枚の四角い鏡(一辺1m弱)が加わる程度。これらで、森、マクベスの館、城内の一室など全てを表現してしまう。

◇しかし、この白いボードが大変な優れものなのだ。舞台に吊り下げられたり、床に立てられたりするが、これにライトを巧みに当てることで、光と影の見事なコントラストを創り出し、登場人物の心境やドラマの流れを的確に描き出す。もちろんライトの色も入念に考えられている。鏡の使用も効果的だ。寓意性やダンス振付面等での意図に加え(たぶん)、鏡の微妙な角度によって、舞台上で、そして更に客席に向かって反射光が放たれる光景も壮観であった。

◇一方、衣装はオーソドックスで豪華。主要な登場人物から魔女や合唱の面々まで、いかにも当時のスコットランドといった風情。舞台装置がシンプルだけに、それとの対比がとても鮮やかだ。

◇なお、背後に立てたボードに登場人物の影を写し、その陰に演技をさせるという趣向もあった。この手法自体は、コンテンポラリー・ダンス公演等では、昔から多用されており新鮮さはないが、光の当て方等は適切であり、陳腐な印象は全くない。

◇象徴的な演出を行うには勇気が必要だ。観客の想像力に期待する部分があるからだ。伝統的な舞台装置であれば無難にこなせよう。今回、斬新な演出を選択し果敢に挑戦したことに、心から敬意を表したいと思う。

<歌唱・合唱>

◇歌手陣は全員が大熱唱・大熱演であったあ。特に素晴らしかったのがマクベス夫人役の斉藤紀子さん。このオペラの真の主役はやはりマクベス夫人。やや硬めの声質に聴こえたが(気のせいかも)、しっかりとした強い声でこの役にぴったりの大活躍。メリハリの利いたその歌唱は耳に心地よい。

◇マクベス役の清水良一さんはタイトルロールを立派に歌い切り、マグダフ役の青栁素晴さんは堂々たる歌いっぷり、バンクォー役の志村文彦さんはさすがの安定感、マルコム役の山田幸隆さんは高音が良く通り、そして、影の主役とも言える魔女たちや随所で登場する合唱も見事であった。

<ダンス>

◇今日の最大の収穫の一つに第3幕のダンスシーンを挙げたい。能美健志氏が率いるダンステアトロ21が踊るコンテンポラリー・ダンスは実にクオリティが高く素晴らしい。純粋に見とれてしまった。個々の異なる動きが全体として一体となる見事な振付、そしてこれに応える6人の有能なダンサーたち。このダンスシーンだけを切り取っても十分観客が呼べるほどだ。

<オーケストラ>

◇山島達夫氏の指揮の下、テアトロ・ヴェルディ・トウキョウ・オーケストラは良くまとまり、生き生きとした素晴らしい演奏を披露した。

●アーリドラーテ歌劇場の次回公演は2020年7月4日、7月5日の《オテロ》とのこと。会場は何と新国立劇場中劇場。とても楽しみだ。

●山島達夫氏には本年3月の日本ヴェルディ協会の総会で初めてお会いした。本公演を教えていただいた同氏に心から御礼申し上げたい。

以上

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