コハーン・イシュトヴァーン&金子三勇士デュオリサイタルに行く(スターツおおたかの森ホール)

●2019年8月24日(土)、コハーン・イシュトヴァーンさんと金子三勇士さんのデュオリサイタルに行った。このリサイタルは、本年4月1日、流山おおたかの森駅前に誕生したスターツおおたかの森ホールのオープニング企画の一つ。コハーン・イシュトヴァーンさんはクラリネット、金子三勇士さんはピアノと楽器は違うが、お二人とも昨今活躍が目覚ましい新進気鋭の若手演奏家。しかも、ハンガリーで少年時代をともに過ごした幼馴染みだという。今日は、ハイレベルな演奏と楽しいトークに魅了される素晴らしいリサイタルとなった。

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●コハーン・イシュトヴァーンさん(以下、コハーンさん)はブタペスト生まれのハンガリー人で奥さんは日本人。金子三勇士さんは日本人の父とハンガリー人の母のもとに生まれたハーフ。今日のプログラムは、このハンガリーに縁(ゆかり)あるものを中心に集めた選曲で、二人の巧みなトークを交えながら楽しく進められていく。特に金子三勇士さんの頭の回転の良さ、観客を楽しませようとするエンターテイナー振りには本当に驚く。

●それでは、演奏順に各曲ごとの様子や感想などを記してみよう。

1.ブラームス:FAE ソナタより第3章スケルツォ
いきなり演奏が始まった。急緩急の変化が際立つドラマチックな曲。ダイナミックで緊張感ある二人の掛け合いに聴き惚れてしまう。

ここで、二人から自己紹介を兼ねた挨拶が入る。金子三勇士さんから二人が少年時代からの友人であることが明かされ、コハーンさん(日本語が達者)からは当時の金子三勇士さんの印象が語られる。そして、これに金子三勇士さんが巧みに返す等、二人の掛け合いは音楽だけではなく、言葉でも超一流だ。

2.ブラームス:愛のまこと
この曲は、もともと歌曲だったとのこと。抒情的な美しい旋律をクラリネットが文字通り歌い、ピアノが静かに寄り添う形。

演奏が終わったコハーンさんの「疲れちゃった」との一言で会場は笑いが漏れる。この流れで、コハーンさんには少し休憩してもらい、金子三勇士さんのソロへ。
  
3.リスト:愛の夢 第3楽章 変ィ長調(ピアノソロ)
誰でも一度は聴いたことがる有名な曲。強弱のメリハリも素晴らしく、大胆にしてきめ細かく変化に富んだ巧みな演奏。

4.リスト:ラ・カンパネラ(ピアノソロ)
こちらはもっと有名な曲。入りはゆっくり。スタンダードな演奏かと思いきや、テンポを自在に操り、次第に盛り上げつつ、劇的なラストに持っていくセンスとテクニックは凄いとしか言いようがない。まさに圧巻のパフォーマンス。

5.リスト:ハンガリー狂詩曲 第2番(ピアノソロ)
超絶技巧を代表する難曲中の難曲。金子三勇士さんは、鋭い感性と確かなテクニックで、力強く正確に演奏していく。あまりの超絶技巧振りに、聴きなれた曲が新たな光を放つよう。ペダルを踏む時の大きな足音も曲に一体化した感覚。

ここで金子三勇士さんから「ホールも新しいが、ピアノも新しい。少し喝を入れたのでピアノの調子も出てきたみたい」とあり、会場から笑い声。さらに再びコハーンさんが登場。金子三勇士さんが「休めましたか?」と」問うと、「ピアノの音が大きくて起きちゃった」と返され、会場は笑いの渦。

6.リスト=コハーン:ハンガリー狂詩曲 第12番
この曲は、コハーンさんがピアノ曲をクラリネット用に編曲したもの。演奏に入る前に、曲の一部をピアノ版とクラにネット版で聴き比べ。なるほど全然味わいが違う。本番演奏では、クラリネットが持つ楽しさ、親しみやすさ、そして何より表現力の豊かさを強く感じ取ることができた。

7.ブラームス:クラリネットソナタ第1番
ブラームスならではの大曲。楽章が進むにつれ、曲の表情が変化する。第1楽章は重厚、第2楽章は穏やかで懐かしく、第3楽章は楽しく軽やか、そして第4楽章は生き生きとしつつも堂々たる雰囲気。演奏が終わると肩を組み合う二人。金子三勇士さんからは「深いですねえ」。コハーンさんからは「ピアノは音が多かったですね」。金子三勇士さんはこれに対し「まるでピアノ協奏曲のよう」。

ここで金子三勇士さんからハンガリーの学校時代の思い出話が飛び出す。「休憩時間はお互い自分の楽器を演奏し合っていたが、楽譜は80%で、後の20%は即興」ということで、日本の唱歌「ふるさと」で実演することに。これが大変面白くて分かり易く、会場は大盛り上がり。

8.ブラームス=コハーン:ハンガリー舞曲 組曲
この曲もコハーンさんがクラリネット用に編曲したもの。ハンガリー舞曲第1番、第4番、第5番などの良く知るメロディが次々に登場。しかし、よりセンチメンタルで、よりドラマチックで、よりリズミカルで、より哀愁に満ちている。クラリネットの奏でるメロディは、まるで演歌かムード歌謡。思い切り唸り、コブシを効かせ、ためを作る。

9.バルトーク:ルーマニア民族舞曲
六つの小曲で構成される。各々の曲はリズムも曲調も異なるが、共通するのは素朴さか。民族音楽を強く意識させ、ちょっと不思議な雰囲気が漂う。

10.モンティ:チャール・ダーシュ
この曲はヴァイオリン編曲版がとても有名。金子三勇士さんから「たっぷり即興を効かせるから普通のチャール・ダーシュとは違うかも」とあった通り、思い入れたっぷりで、粘りが強く、しっかり泣きが入り、だからものすごく濃い。こんなチャール・ダーシュを聴いたのは初めてだ。

●以上でプログラムは全て終了。しかし名残を惜しむ観客の拍手は鳴りやまない。ここで会場の照明が落とされ、ステージ中央にスポットが当てられる。

●この後、何とコハーンさんがピアノを弾き出し、しばらくして金子三勇士さんが代わり、コハーンはクラリネットを吹き始める。心に沁みる素敵な曲だ。演奏が終わったところで種明かし。何とこの曲は全くの即興だったとのこと。観客からは驚きの声と感嘆の拍手。

●金子三勇士もコハーン・イシュトヴァーンさんも本当に凄い。テクニックが優れているのはもちろんだが、それに加え、音楽の楽しさを伝えることがとても上手だからだ。これからのご活躍を心からお祈りしたい。

以上

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