第7回東日本大震災復興支援チャリティコンサート『真夏の第九』に行く

●2019年8月25日(日)、第7回東日本大震災復興支援チャリティコンサート『真夏の第九』に行った。会場は杉並公会堂(荻窪駅下車)。「第九」と言えば年末の風物詩。私自身この暑い季節に第九を生で聴くのは初めての経験だ。しかし、「どうして真夏に第九なの」との疑問など吹き飛んでしまうほどの、気分が高揚し元気が沸き上がって、そして心が温まる感動的で素晴らしいコンサートであった。

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●プログラムによれば、そもそも、このコンサート『真夏の第九』は、震災被災地である大槌町に町民のコミュニティの場として音楽ホールを建設しようという大きな目標を掲げて、2013年にスタートしたプロジェクトとのこと。大学生から社会人、アマチュアからプロまで、多くの人たちの賛同を得て毎年開催され、今年は何と7回目。ご関係者の方々の、一過性ではない地道なご尽力に本当に頭が下がる。

●指揮者は、国内外で広く活躍されている阪本正彦さん。同氏は第1回の『真夏の第九』から指揮をされている。オーケストラも合唱団もこのプロジェクトのために集結したメンバー。もちろん全員アマチュアだという。合唱団はミドルからシニアの方々が主力であるのに対し、オーケストラには結構若い方も目立ちとても嬉しく思う。そして4人のソリストの方々は、加藤千春さん(ソプラノ)、小谷円香さん(メゾソプラノ)、渡辺大さん(テノール)、与那城敬さん(バリトン)という錚々たる布陣。

●それでは、以下、演奏順にその様子や感想などを記してみよう。

【アルヴェーン/スウェーデン狂詩曲第1番「夏至の徹夜祭」】

◇明るく愉快な旋律が心を躍らせる色彩豊かな楽しい曲。人々が集い語らい踊り明かす様子が目に浮かぶよう。初めて聴いたはずなのに、前から良く知っていたような記憶も。不思議に思いプログラムの解説を読んで納得した。NHKの「きょうの料理」の原曲だったのだ。演奏するオーケストラは想像以上にレベルが高い。弦楽器の震え、管楽器の咆哮やさえずり、ハープの煌(きら)めき、打楽器の締めなどが、次々と「決まって」いく。生き生きとした、とてもチャーミングな演奏であった。

【ベートーヴェン/交響曲第九番「合唱付き」】

◇第九は今まで何度も聴いてきた。しかし、毎回の印象は新鮮であり決して飽きることはない。今回ももちろん例外ではなく、オーケストラの演奏は終始緊張感が途切れることがなく続いていく。全楽章を通じて言えるのは、鳴らすべきところは思い切り鳴らす、抑えるべきところは確り抑えるということだろうか。力強さや歯切れ良さと、情感を込めて歌い上げる繊細さとの間の自在な変化が見事だ。指揮者の力量なのか、オーケストラの実力なのか。たぶんその両方なのだろう。小さなアクシデントはあったかも知れないが、全く気にならない。

◇第4楽章の合唱は迫力満点。まさに圧巻だ。男女合わせて百数十人(大槌町から駆け付けた少女3人も加わっている)が陣取るのはステージ背後の一段高いP席。P席から発せられる歌声は、あたかも天から降り注ぐよう。実際に、ホールの天井に当たって降りてきているのかも知れない。前述のとおり、メンバーはミドルやシニアの方々が主力だが、その声は若々しく自信に満ち溢れている。

◇なお、合唱団のうち女性50名ほどは第1楽章から席についていて、第4楽章から残りの100名ほどが入場するという変則的な形。ホール舞台裏の事情等もあったと聞くが、先陣の50名の席位置は絶妙で視覚的に全く違和感はない。一見整然としているように見えて、微妙に左右非対称にする等、なかなかの演出と感じられた。

◇ソリスト4人の方々は、さすがプロとしか言いようがない。加藤千春さんは輝くような美声、小谷円香さんは存在感が抜群、渡辺大さんは高音が響きわたり、与那城敬さんは堂々たる歌いっぷり。最初に与那城敬さんが観客席側から登場したのは全く想定外だったのでとても驚いた。気の利いたアイデアだと思う。

●この後は、観客とともに「歓喜の歌」と「ふるさと」を大合唱。4人のソリストは観客席側に入って歌い、会場を盛り上げる。私は「歓喜の歌」は着いて行くのがやっと、「ふるさと」は40年ぶりにバスパートを歌って大満足。私の斜め前のご婦人は感激のあまりハンカチで涙をぬぐっていた。私も全く同じ気持ちだ。

●最後に締めの一言。音楽にとって演奏の巧拙はもちろん重要だが(今日は十分上手かった)、もっと大切なことがある。どういう「場」(物理的な場所でなくシチュエーションの意)で演奏するか、どういう「気持ち」で演奏するか、そして、どういう「仲間」と演奏するか、ということ。それによって、音楽の「質」が大きく変わり、聴く人の心を掴めるかが決まる。そういう意味で、今日の「真夏の第九」は間違いなく「良質」で「感動的」なコンサートであった。招待してくださった友人(テノールとして合唱に参加)に心から感謝申し上げたい。

以上
 

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この記事へのコメント

蔵田隆之
2019年08月26日 22:12
お暑い中、ご来場ありがとうございました。ご賛辞をいただき誠にありがとうございます😊来年もどうぞ。
小谷円香
2019年08月30日 12:20
この度はご来場ありがとうございました。
主宰からスタッフまでエントランスを除き、皆出演者というコンサートで至らない点もあったと思いますが、嬉しい記事に感激しています。
私達の思いは空回りしているのではないか、と演奏会の度に思っていましたが、お客様に伝わっていて安堵いたしました。
これからも応援していただければ幸いです。