東京大学音楽部OB合唱団 アカデミカコール演奏会2019 に行く(三澤洋史氏作曲ミサ曲初演)

●2019年8月11日(日)、東京大学音楽部OB合唱団アカデミカコールの演奏会に行った。本当に素晴らしく感動的なイベントであった。この演奏会は東京大学音楽部創立100周年を記念して行われるメモリアルな企画のオープニングを飾るもの。指揮は、アカデミカコールの常任指揮者で、新国立劇場の合唱指揮者としても名高い三澤洋史氏。そして演目は、何と同氏作曲のミサ曲の世界初演という有難さ。この場に立ち会えることだけでもとてもうれしい。さらに特別賛助出演として、三澤洋史氏が音楽監督を務める東京バロック・スコラーズも参加し、バッハのモテットを2曲披露するなど、今日は、合唱の奥深さと醍醐味を心から満喫する貴重な体験となった。

A アカデミカコール.jpg

●なお、会場は東京芸術劇場コンサートホール(池袋)。このホールの収容力は2000人と都内の劇場の中でも相当大きい方だが、今日は略満席。三澤洋史氏及びアカデミカコール、そして東京バロック・スコラーズの集客力に改めて驚く。観客は、やはり良いものは良く知っている。

●それでは、以下、演奏順に演目毎の様子や感想などを記してみたい。

<第1ステージ>

J.S.バッハ作曲 モテット第5番「来てください、イエスよ、来てください」
J.S.バッハ作曲 モテット第4番「恐れるな、私はお前のそばにいる」

指揮/三澤洋史 合唱/東京バロック・スコラーズ
チェロ:江口心一、コントラバス:池松宏、オルガン:浅井美紀

◇さすが三澤洋史氏が率い「21世紀のバッハ」を追求する東京バロック・スコラーズ。緊張感が途切れない厳かで歯切れよい見事な合唱だ。非常にクオリティが高く、とてもアマチュアとは思えない。奥行きが深く美しいハーモニーは聴いていてため息がでるほど。シニア主体のメンバーながら歌声は若々しく、そして時にはシニアならではの落ち着いた雰囲気が漂う。

◇バッハの音楽自体は堅牢な構造物を連想させるが、これに魂を吹き込められるかどうかは演奏家次第。合唱はもちろん、実力者揃いの伴奏メンバーの力もあって、今日は、バッハが表現しようとした人間の悲しみ、神への祈り、そして希望を心から感じ取れる名演であった。

◇なお、私はモテットを普段あまり耳にすることがないが、カンタータとは違う魅力に初めて気づく。ソロがないだけに合唱がより研ぎ澄まされたように感じられた。

<第2ステージ>

三澤洋史作曲 男性合唱と8人のアンサンブルのための Missa pro Pace

指揮/三澤洋史 合唱/東京大学音楽部合唱団アカデミカコール
第1ヴァイオリン:吉岡麻貴子、第2ヴァイオリン:大和加奈、ヴィオラ:村田恵子
チェロ江口心一、コントラバス:池松宏、アルト・サキソフォン:佐藤温
パーカッション:本間修治、ピアノ:三木蓉子

◇凄い曲である。長さも約1時間の大曲だが、中身がとても独創的。確かに冒頭の Kirie に始まり、その後、Gloria、Credo、Sanctus、Benedictus、Agnus Dei などが続く。Credo の部分の最後に Festa(祭りの意) di Credo という賑やかな曲が入るが、全体としては堂々たるミサ曲となっている。しかし、今まで誰も聴いたことがないような破格のミサ曲なのだ。楽しくて元気が良くて、しかし何故か心に沁みる。

◇曲の印象は目まぐるしく変化する。南米あたりの激しいリズムの民族音楽のようであったり、ロマンチックな映画音楽のようであったり、美しい日本の声楽曲のようであったり、懐かしい歌謡曲のようであったり、心躍るジャスの名曲のようであったり、そしてちょっと難解な現代音楽のようであったりもする。

◇三澤洋史の音楽の凄さは、旋律の味わいやリズムが異なる様々な音楽を、言わば「ごった煮」のように一旦取り込み、なおかつ統一感を失わないこと。いやそれどころか、それぞれの音楽の持つ本質的な魅力を抽出し、三澤流とも言うべき独特の手法で今一度編み上げた全く新しいタペストリーのように感じられる。大胆にして精緻かつ綿密。その巧みな曲作りには驚かないではいられない。

◇合唱は表現力が抜群であった。こちらも60歳代70歳代のシニアが中心だが、とてもレベルが高い。また8人のアンサンブルの奏者の方々の演奏も実に見事であった。中でも特に印象に残ったのは、アルト・サキソフォンの佐藤温さんとパーカッションの本間修治氏。本作品初演大成功の立役者と言っても過言ではない。

◇アンコールは、Credo から Festa di Credo をもう一回。サンバのリズムに乗った喜び溢れる素晴らしい曲だ。聴いていて本当に幸せな気持ちになる。観客席からも自然に手拍子が沸き上がる(クラシックのコンサートではめったにない)。今日の公演を締めくくるに相応しい曲であった。

●今日の演奏会には、私のかつての職場の友人が第1ステージ、第2ステージともに合唱団の一員として参加していた。お声がけいただいたその友人に心から感謝申し上げたい。

以上

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