新国立劇場バレエ団公演『アラジン』を観る

●2019年6月15日(土)、新国立劇場バレエ団公演『アラジン』を観た。この作品は、英国を代表する振付家ビントレー氏が、ここ新国立劇場のために創作し、2008年に初演されたもの。その後、同劇場の人気演目の一つとして、2011年、2016年に再演され今回で4回目となる。今日も、音楽よし、振付よし、出演者よしの三拍子そろった見事な公演で、理屈抜きで素直に楽しめた。

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●ストーリーは、誰もが知る「アラジンと魔法のランプ」をベースにしたもの。貧しい中国移民の子、アラジンがふとしたことから手に入れた魔法のランプ。ランプを擦ると現れたのは何でも願い事を叶えてくれるランプの精ジーン。アラジンは、魔術師マグリブ人と戦いながらも、ジーンの助けを借りて、ついには愛する美しいプリンセスとめでたく結ばれるというサクセス・ストーリー。

●音楽は、ジョン・ウイリアムズを彷彿させる上質な映画音楽のよう。平易で分かり易く耳に心地よい旋律、ダイナミックなオーケストラの響き。時折現れる中国テイストも面白い。ビントレー氏が気に入ったというのも頷けよう。

●ここで、スタッフと主要なキャスト(本日分)を確認しておこう(敬称略)。

<スタッフ>
音楽:カール・デイヴィス
振付:デヴィッド・ビントレー
指揮:ポール・マーフィー
管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団

<キャスト>
アラジン:福岡雄大  プリンセス:小野絢子
アラジンの母:中田実里  サルタン(プリンセスの父):菅野英男
ランプの精ジーン:井澤駿  魔術師マグリブ人:貝川鐵夫
アラジンの友人:木下嘉人、原健太
サルタンの守衛:福田紘也
オニキスとパール:五月女遙、飯野萌子、広瀬碧、福田圭吾、木下嘉人、原健太
ゴールドとシルバー:寺井七海、横山柊子、中家正博、趙載範
サファイア:本島美和
ルビー:木村優里、渡邊峻郁
エメラルド:寺田亜沙子、玉井るい、速水渉悟
ダイヤモンド:柴山紗帆

●続いて、公演の様子や感想を各幕ごとに記してみたい。

<第1幕>

◇第1場は「昔むかしのアラビアの市場」。人々で賑わう中、イタズラ好きなアラジンは宮廷の警備隊に捕まるが、魔術師マグリブ人に助けられる。舞台上のセットはシンプルだがとても温かくまるで絵本の世界。アラジンは舞台狭しと駆け回ったり、踊りまくったりと、とても躍動的なシーンだ。

◇第2幕は「砂漠への旅」。アラジンはマグリブ人に洞窟の中の古いランプを取ってくるように命じられる。ためらうアラジンにマグリブ人は絶世の美女の幻影を見せ、その気にさせる。砂漠の中で踊る女性たちのエキゾチックな群舞がとても魅力的だ。さて絶世の美女とは誰でしょう。

◇第3場は「財宝の洞窟」。階段を降りていくと、そこにあるのは金銀宝石の山。アラジンが古いランプを見つけると、マグリブ人から寄こせと言われるが、渡さなかったアラジンは洞窟の中に閉じ込められてしまう。この洞窟のセットはとても美しい。妖しくも、きらきらと輝く不思議な雰囲気。ここで繰り広げられる宝石のディヴェルティスマンは本当に素晴らしい。豪華で華やかなソロ、パ・ド・ドゥ、群舞などが惜しげもなく披露される。アラジンは呆然と見とれているが、本当に見とれているのは観客である我々だ。煌びやかな光景に思わず息を飲む。

◇第4場は「アラジンの家」。息子がいなくなり心配する母。そこへアラジンが魔法のように姿を現し、冒険譚を語る。そしてランプを擦るとランプの精ジーンが洞窟の財宝とともに颯爽と登場。息子との再会を喜ぶアラジンの母を演じる中田実里さんはとてもチャーミング。

◇第5場は「王宮の外」。サルタンの娘プリンセスが宮殿の浴場へ向かうところ。高貴な彼女を見ることが禁じられる中、アラジンだけは心を奪われ見とれてしまう。砂漠で見た幻影の美女と瓜二つだったからだ。アラジンは持っていたリンゴをプリンセスにそっと投げ渡す。ここで思わずハプニング。プリンセスが受け取りに失敗し、リンゴを床に落としてしまったのだ。まあ、これもご愛敬。でもさすが高貴なプリンセス、慌てず騒がず、なにごともなかったように優雅に拾った。プリンセス役の小野絢子さんの人気は絶大だ。彼女が舞台に登場すると、観客席からどっと拍手が沸き起こる。さすがバレエならではの光景(宝塚も?)。会場のテンションはぐっと盛り上がる。

<第2幕>

◇第1場は「浴場」。優雅に湯を浴びるプリンセス。忍び込み、彼女をのぞき見するアラジン。ここで第1幕の最後のリンゴが再登場。アラジンがリンゴをかじりながらプリンセスと踊るパ・ド・ドゥは、とても微笑ましい。

◇第2場は「宮廷」。プリンセスをのぞき見した罪でアラジンは捕えられ、サルタンや裁判官の前へ。プリンセスの必死の懇願も空しく死刑宣告が下り絶対絶命というところで、間一髪、アラジンの母がランプを持ち込んだ。アラジンが擦るとジーンが現れ、アラジンは立派な若者に変身し、財宝をサルタンに献上。これでアラジンは認められ、二人は晴れて結婚することに。ここで踊られるのはアラジンとプリンセスの至福のパ・ド・ドゥ。さすが小野絢子/福岡雄大の最強ペア。見ているものを幸福な気持ちにさせてしまう。また、ジーンが奴隷たち(たぶん)の先頭に立って踊るシーンはまさに圧巻。キレッキレの動き、シャープな身のこなしを見てるだけで、こちらの血流が速くなりそうだ。なお、一連の祝福の場面に珍しいものが闖入した。獅子舞である。中に入った2人のダンサーの動きに観客は大喜びだ。

<第3幕>

◇第1場は「王宮の一室」。アラジンが狩りに出かけ後に残されたプリンセス。彼女のもとに、物乞いに変装した魔術師マグリブ人が訪れ、騙されたプリンスセスは古いランプと新しいランプを交換していまう。ジーンを味方につけたマグリブ人はプリンセスをさらっていく。さらわれたプリンセスが空を飛んでいくシーンは結構楽しめる。

◇第2場は「魔術師マグリブ人のハーレム」。囚われの身になったプリンセス。そこへアラジンが助けに駆け付ける。プリンセスはアラジンが持ってきた強力な眠り薬をやっとのことでマグリブ人に飲ませることに成功。朦朧とするマグリブ人をアラジンは打ち倒す。そして二人は「魔法の絨毯」で帰路につく。アラジンとプリンセスが、マグリブ人の盃に何としてでも眠り薬を入れようとして踊る3人のパ・ド・トロワ(?)は、とても愉快だ。 ユーモアに溢れた演技に、会場のあちこちから笑いが漏れる。 

◇第3場は「アラジン国に帰る」。アラジンとプリンセスは無事帰国。二人を祝い賑やかなフィナーレとなる。ここでも二人のパ・ド・ドゥが披露される。何と、「龍おどり」も登場し華を添える。我々が「長崎くんち」で知っているものと同じ。何人かが棒で龍を支え頭上で操る出し物だ。まさに中国風。こうして、この楽しいバレエは大団円のエンディングとなる。

●出演者の方々は皆さん素晴らしく、その熱演に心を打たれたが、やはり、小野絢子さん、福岡雄大さんのお二人はまさに完璧。その輝くオーラ、美しいヴィジュアル、卓越したテクニックとも際立っている。アラジンの母役の中田実里さんの演技力にも脱帽だ。最後はサルタンにしっかり寄り添い、まんざらでもない雰囲気。ジーン役の井澤駿氏(いつもは王子役かな)は、期待された役割を十二分に果たす大熱演。マグリブ人の貝川鐵夫氏は特異なキャラを見事に演じ切った。もう一人忘れてはばらないのが本島美和さんだ。宝石のディヴェルティスマンでサファイア役で登場し観客を魅了した。彼女の大ファンの私としては、その美しい演技を見ることができ、とても嬉しい。

(余談だが)

●私の席は3階席の第1列。とても見やすい。私の左隣の上品なご婦人にお声がけしたら、大変なバレエ通の方だった。月数回は観ているという。私が良く分からなかった場面(リンゴを投げ渡すところ等)、今後のお薦めバレエ公演等について、親切に教えて下さった。二度とお会いすることはないと思うが、とても楽しい会話をすることができた。心から御礼申し上げたい。

以上

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