「紀尾井 明日への扉23 三宅理恵(ソプラノ)」に行く

●2019年2月22日(金)、紀尾井ホール(四ツ谷)で、ソプラノ歌手・三宅理恵さんのリサイタルに行った。この公演は、「紀尾井 明日への扉」という企画として開催されるもので、今回が23回目となる。この企画は、キラリと光る若手の有望なアーティストが文字通り「明日への扉」を開き、その向こうにある大きな未来と豊かな音楽の世界へ案内しようというものだ。三宅理恵さんは、2018年10月31日(水)のオペラ公演「ソラリス」で、ハリー役を歌った方。それ以来、私は彼女の「ファン」になってしまい、今日は待ちに待ったソロ・リサイタル。素晴らしい歌声に身を委ねながら、本当に満ち足りた時間を過ごすことが出来た。これで私は間違いなく「大ファン」になってしまったらしい。

(オペラ公演「ソラリス」の記事はこちら

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●三宅理恵さんが歌うのはバラエティに富んだ14曲(うち1曲はアンコール曲)。なお、伴奏は川島基さん。それでは、演奏順にその様子や感想などを記してみたい。

1.H・パーセル
歌劇《妖精の女王》Z.629より「聴け!大気はこだまして」(作詞・不詳)

三宅理恵さんが白地にシルバーの輝きを放つ美しいロングドレスで颯爽と登場。そして何といきなりバロック・オペラのアリアを歌い出す。喜びに満ち溢れた小気味よく楽しい曲。声は良く通り、メリスマといわれる装飾的な歌唱が見事だ。

2.W・A・モーツァルト
「すみれ」KV476(作詩:J・W・ゲーテ)

とても有名な愛らしい曲(すみれにとっては切ないが・・・)。私も生で幾度か聴いたが、歌う方によって味わいが異なる。三宅理恵さんは、まるで歌う朗読のよう。メリハリあり、表情豊かに、小さなドラマを生き生きと文字通りドラマチックに歌い上げた。

3~5.H・ヴォルフ
《ゲーテの詩による歌曲集》より第26曲「つれない少女」、第27曲「心変わりした少女」
《メーリケの詩による歌曲集》より第48曲「こうのとりの使い」

「つれない少女」は躍動的な歌。言い寄る男性をつれなくあしらう少女を楽しげに歌う。情景が目に浮かぶよう。「心変わりした少女」は一転してしっとりと抒情性豊か。寂しげな美しい旋律を歌う高音の美声が素晴らしい。そして「こうのとりの使い」は緩急の変化も度々あってとても面白い曲。顔の表情も生き生きとしていて表現力がある歌唱に完全に引き込まれてしまう。

6~7.ドビュッシー
「アリエルのロマンス」(作詞:P・ブルジェ)
《忘れられたアリエット(小唄)》より第4曲「木馬」(作詞:P・ヴェルレーヌ)

「アリエルのロマンス」はロマンチックでお洒落な曲。まさに幽玄で魅惑の世界だ。優しく柔らかい歌声。三宅理恵さんの魅力をまた一つ発見した思い。一方「木馬」は疾走感ある軽快な曲。弾けるような歌声に、聴いているこちらも楽しくなってくる。

8.シャミナード
肖像(歌のワルツ)(作詞:P・レニエル)

ピアノ伴奏に加えて永井由比さんのフルートも登場し、前半の最後を盛り上げる。スウィングするような美しくも少し切ない愛の歌。美しい女性を想う男性の気持ちを歌う歌だが、その美しい女性が三宅理恵さん自身ということかしら。

~休憩~

9.藤倉大
「世界にあてた私の手紙」(作詞:E・ディキンソン/W・ブレイク)

三宅理恵さんがブルー系の素敵なロングドレスに着替えて登場。白地に濃紺の刺繍、さらにその上に青色のレースを被せるような仕立て。耳だけでなく目でも楽しませてくれる。ここで彼女から一言。今日、名古屋では藤倉大氏の「組曲ソラリス」が世界初演されていて、こちらでは、「世界にあてた私の手紙」のソプラノ版が世界初演となる。しかも、バリトン版を歌ったのはオペラ「ソラリス」で共演したリー・メルローズ。藤倉大氏と「ソラリス」とのご縁を強く感じる。とのこと。確かに。私がここにいるのも「ソラリス」があったから。

藤倉大氏の作品は全部で6曲。テンポも曲想も異なるが、印象は共通している。奇妙な旋律と不協和音。しかし、何故か透明感がある。歌詞表に目をやれば、哲学的、文学的な文章が並ぶ。異次元の世界が目の前に開け、三宅理恵さんがこの世界に我々を誘(いざな)うようだ。美しい声なので説得力がある。

なお、3曲目が終わったところで拍手がパラパラっと起こった。たぶん勘違いなのだろう。ここでの三宅理恵さんの対応が実に素晴らしい。にっこり微笑み軽く頷(うなず)いたのだ。当惑した会場の雰囲気がまるで魔法のように和んだ瞬間であった。

10.R・ハンドリー
11.A・プレヴィン
12.R・I・ゴードン
「朝は本当にあるの?」(作詞:E・ディキンソン)

同一の詩をもとに異なる作曲家が書いた3つの作品。ハンドリーは、ひたすら美しく澄み切った曲。プレヴィン(あの有名なプレヴィンですよ!)は、一転して活気ある曲。そしてゴードンは、再び美しい旋律の曲。まるでミュージカルの名曲のように心に沁みる。三宅理恵さんの歌声にすっかり聴き惚れてしまった。

13.C・グノー
歌劇《ロミオとジュリエット》より「ああ、なんという戦慄が」(作詞:J・バルブエ&M・カレ)

まさに熱唱。堂々たる歌いっぷり。全身を使った迫真の演技も素晴らしく、ドラマチックなアリアを存分に歌い上げた。「さすが!」としか言いようがない。一瞬、声を止めた時の場内の残響も凄い。

14.C・グノー
歌劇《ロミオとジュリエット》より「私は夢に生きたい」・・・アンコール曲

アンコールに相応しい名曲中の名曲。大事に扱うような丁寧な歌い方から、次第に盛り上がっていく。そして披露される超絶技巧。素晴らしいテクニックと心のこもった表現に大感動のラストであった。

●三宅理恵さんは、その美しい歌声と豊かな表現力で聴くの者の心を捉えて離さない。今日は文字通り「明日への扉を」大きく開けてくれた。まさにこれからの声楽界を支える大変な才能の持ち主だ。今後益々のご活躍をお祈りしたい。

●なお、最期になったが、ピアノ伴奏の川島基さん、フルートの永井由比さんも、今日のリサイタル成功を支えた方々。心から感謝いたしたい。

以上

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