新国立劇場オペラ『タンホイザー』を観る

●2019年2月2日(土)、新国立劇場(初台)で、ワーグナー作曲のオペラ「タンホイザー」を観た。私はこの作品を生で観るのは初めて。加藤浩子さんの講座(学習院さくらアカデミー)を受講し、事前の予習も万全という状態で臨んだ。感想は「大感動!」と言いたいところだが、残念ながら少々複雑な思い。もちろん良いところもあったので後悔はない。

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●「タンホイザー」は、騎士タンホイザーが官能的な愛と精神的な愛との間で葛藤する姿を描く作品。舞台は中世ドイツ。愛欲の女神ヴェーヌスの虜になりヴェーーヌスベルクに滞在していたタンホイザー。彼はある日この生活に決別すべく、愛するエリーザベトが待つヴァルトブルグに帰還する。そして、城で開催された歌合戦に参加するが、「愛の本質とは何か」と問われると、ヴェーヌス讃歌を高らかに歌い、周囲の猛反発を買ってしまう。そこで贖罪のためローマ法王の元へ巡礼の旅に出るが、法王からの許しは得られない。絶望したタンホイザーは再び官能の愛に溺れかけるが、エリーザベトの自己犠牲によって救済され、最後は息絶えるというストーリー。内容は普遍的で、且つワーグナー作品の中では非常に分かりやすい。

●まずは、今日のメンバーを確認しておこう(敬称略)。トルステン・ケールは世界的なヘルデン・テノールと聞く。ワーグナーではなくコルンゴルトだが、数年前の「死の都」(新国立劇場)の素晴らしい歌唱も記憶に新しい。

◇指揮:アッシャー・フィッシュ
◇演出:ハンス=ペーター・レーマン

◇領主ヘルマン:妻屋秀和
◇タンホイザー:トルステン・ケール
◇ヴォルフォラム:ローマン・レーケル
◇ヴァルター:鈴木准  ◇ビーテロルフ:萩原潤
◇ハインリヒ:与儀巧  ◇ラインマル:大塚博章
◇エリーザベト:リニネ・キンチャ
◇ヴェーヌス:アレクサンドラ・ペーターザマー
◇牧童:吉原圭子
◇4人の小姓:前川依子、福留なぎさ、花房英里子、長澤美希

◇合唱:新国立劇場合唱団
◇バレエ:新国立劇場バレエ団
◇管弦楽:東京交響楽団

●ハンス=ペーター・レーマンの演出はとても魅力的だ。舞台装置は抽象的・象徴的だが、衣装は具象的・伝統的。そのバランス感覚は見事と言える。舞台上にあるのは、基本的には半透明で直径2m大の巨大な円柱状の物体が数本。置かれる位置や配列、絶妙な照明効果等によって、様々な状況を表現してしまう。第1幕は、円柱が次々と立ち上がる印象的な光景で始まり、最初はヴェーヌスベルク、そして「聖母マリア」の名を呼ぶと一本の円柱が回転し中から十字架が現れ、ヴァルトブルグ郊外の谷間へと鮮やかに転換する。第2幕は、円柱が整然と並ぶヴァルトブルグ城内。そして第3幕では、円柱が再び不規則に並ぶヴァルトブルグ郊外へ。美しく且つ説得力のある舞台であった。衣装は、具象的・伝統的と言ったが、より正確に言えば、「そう観客が感じ取るように演出された」優れて象徴的なものかも知れない。

●歌手陣の中では、何と言っても領主ヘルマン役の妻屋秀和氏の安定感と存在感が抜群の光を放った。妻屋氏の歌唱は今まで何度も聴いてきたが、そのレパートリーの広さ、レベルの高さにはいつも感服している。タンホイザー役のトルステン・ケール氏は期待が大きかっただけにやや残念な思い。調子を崩していたのだろうか。特に第1幕で声が通らずにハラハラ、第2幕、第3幕と次第に上向きになってはいたが・・・。そのほか主役級では、ヴォルフォラム役のローマン・レーケル氏、エリーザベト役のリニネ・キンチャさん、ヴェーヌス役のアレクサンドラ・ペーターザマーさんは無難にこなしたという印象。一方、脇を固める日本人歌手たちは、きちんと自分の仕事をしたと思う。特に牧童役の吉原圭子さん美しい歌唱を披露した。

●なお、エリーザベト役のリニネ・キンチャさん、ヴェーヌス役のアレクサンドラ・ペーターザマーさんは見た目も、歌声の感じも良く似ている。エリザベートとヴェーヌスは同一の女性の中に存在する二面性を示すものとの解釈もあるが、今回の演出は、これを意識したものかもしれない。

●合唱団はもちろん素晴らしい。やはり新国立劇場の合唱団はレベルが高い。また、作品冒頭のバレエシーンも見応えがあった。その動きは、柔らかく妖艶、それでいて芯が通っている。さすがである。指揮と管弦楽の演奏については、加藤浩子さん(私のオペラ鑑賞の師匠)をはじめ手厳しい批評や意見が多い。確かにそうかなと思う部分も多々あるが、まだまだ勉強不足な私としては、コメントを差し控えたい。

(余談ですが)

●オペラを観た後は、加藤浩子さんと生徒仲間10名ほどで、近くのイタリアン・レストラン「マンジャフォーコ」で夕食会。おいしい料理を食べながら、今日の「タンホイザー」や、最近観たオペラ、これから観るオペラなどについて、何の気も使わず自由に語り合う。何と贅沢な時間なのだろう。終わってみれば、今日はやっぱり最高の一日であった。

以上

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