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zoom RSS 北とぴあ国際音楽祭2018モンテヴェルディ作曲オペラ 『ウリッセの帰還』を観る

<<   作成日時 : 2018/12/06 22:48   >>

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●2018年11月25日(日)、北とぴあさくらホール(王子)で、モンテヴェルディ作曲オペラ『ウリッセの帰還』を観た。本公演は、北とぴあ国際音楽祭2018の一環として実施されるもの。本当に素晴らしく、まさにバロック・オペラの魅力に身も心も浸りきる至福の時間。歌唱、楽器演奏そして演出の全てが完璧とさえ思えるほど、実にクオリティの高い公演であった。

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●作曲家モンテヴェルディ(1567〜1643)は、音楽の歴史に燦然と輝く巨星である。その活動時期は長くルネサンス期からバロック期にわたる。作曲したオペラは少なくとも18曲とされるが、現存するのは「オルフェオ」(1607)、「ウリッセの帰還」(1641)及び「ポッペアの戴冠」(1642)の3点のみ。何れもオペラ黎明期の大傑作であり、この中の一つを上演する本公演は、オペラ・ファンとして見逃すわけには行かない。

●物語は、まさにギリシャ神話の世界。トロイ戦争で戦ったウリッセは、ふとしたことから海神ネットゥ−ノの怒りを買ったため、20年間も祖国に帰国できない。夫を思い嘆き悲しむ妻ペネローペ。彼女の周りには求婚者が押しかけ、また侍女メラントはしきりに再婚を勧めるが、ペネローペの心は変わらない。そうした中、女神ミネルヴァの助けにより、ウリッセは老人に身をやつし漸く自国にたどり着き、息子テレーマコとの再会も果たす。ペネローペが「ウリッセの弓を射ることができた者と結婚する」と宣言したため、求婚者たちはこれに挑むが誰も弓を引くことすらできない。そこへ老人姿のウリッセが歩み出て、見事にその弓を引き求婚者たちを射殺してしまう。その老人がウリッセであることをなかなか信じようとしないペネローペも、最後は本人しか知りえないウリッセの言葉に納得して、2人は再会を喜び幕となる。

●さて、ここで今日のメンバーを確認しておこう(敬称略)。バロック・オペラを上演するに際し、これ以上望めないほどの選りすぐりの方々と言える。なお、プロローグで、擬人化した「抽象的な概念」の役が登場し、この後の物語の本意を比喩的に表現するところが、いかにもバロック・オペラらしい。

◇指揮:寺神戸亮  ◇演出:小野寺修二

〈プロローグ〉 
◇人間のもろさ:上杉清仁  ◇時:渡辺祐介
◇運命:クリスティーナ・ファネッリ  ◇愛:広瀬奈緒

〈本幕〉
◇ウリッセ:エミリアーノ・ゴンザレス=トロ
◇ペネローペ:湯川亜也子
◇ミネルヴァ:クリスティーナ・ファネッリ
◇テレーマコ:ケヴィン・スケルトン
◇エウメーテ:櫻田亮  ◇イーロ:フルヴィオ・ベッティーニ
◇メラント:マルチド・エティエンヌ  ◇エウリーマコ:眞弓創一
◇エリクレーア:波多野睦美  ◇ジェーヴェ:谷口洋介
◇ジュノーネ:阿部早希子  ◇ネットゥーノ:渡辺祐介
◇ビザンドロ:中嶋俊晴  ◇アンフォーノモ:福島康晴
◇アンティーノオ:小笠原美敬

◇フェアーチェ人たちの合唱(第1幕):
   中嶋俊晴/上杉清仁/福島康晴/眞弓創一
◇天の合唱(第2幕):
   広瀬菜緒/マルティド・エティエンヌ/上杉清仁/福島康晴
◇海の合唱(第3幕):
   中島俊晴/眞弓創一
◇パフォーマー:辻田秒暁/遠山悠介

〈管弦楽〉
レ・ボレアード
 寺神戸亮、竹嶋祐子、秋葉美佳、荒木優子、懸田貴嗣、
 西澤誠治、エマニュエル・ジラール、古橋潤一、浅井愛、
 上野訓子、笠原雅仁、永谷陽子、伊藤美恵、ダニエル・ザビコ、
 上野直毅、野澤知子

●このオペラは「セミ・ステージ方式」で上演された。常識的に考えれば、そこで演出が果たす役割は限定的だ。しかし今回は違う。むしろ、大きな制約があるからこそ演出がより際立ったような印象だ。小野寺修二氏はマイム出身のコンテンポラリー・ダンス振付家/ダンサー。最近はダンスと演劇の垣根を越えた独自のパフォーマンスの演出及び出演等、その活躍は目覚ましい。私の知る限りにおいて、小野寺氏が創り出す舞台の特徴は、「シンプルな者を用いつつ観客の想像力を最大限引き出す見事な『場』づくり」と「切れ味鋭くリズミカルで小気味よい身体表現」だと認識しているが、本公演においてもそれが十二分に発揮されてたと思う。

●もう少し具体的に言えば、舞台上にあるのは、オーケストラのほか、椅子、テーブル、銀色の板(裏返すと赤い棚)、二段の大きな台(途中から赤い絨毯が敷かれる)のみ。これらの組み合わせだけで、ウリッセの宮殿もイタカ島の海岸も森の中もすべて表現してしまう。また、パフォーマー2名の動きもとても面白い。2人はメラントとエウリマコと同じ衣装を着ていて、彼らの密会場面では、各々の「分身」として振る舞い踊る。場面が変わるごとに机や椅子を移動させるのもパフォーマーの2人だ。この動作そのものが作品の一部になっているのだ。

●演出の最大の見せ場は「弓を射る場面」だ。第1幕から第2幕に移った時、おやっと思ったのは正面後方に立てられた大きな木製の板の壁の存在。さて、いよいよ弓を射ることになり、舞台中央のテーブルには「純白のウリッセの弓」が立てられた。そして三人の求婚者は脇に置かれた別のテーブルの上に立ち弓を弾く仕草。すると何と、横から光が当てられ、木製の壁には必死に弓を引こうとする求婚者が映し出される。「影絵」作戦という訳だ。弓に触っていないのだから引けるわけがない。これには恐れ入る。

●オペラにおける「分身」、コンテンポラリー・ダンスにおける「影絵」のアイデアはさほど珍しいものではない。小野寺氏の凄さは、そのアイデア自体にあるのではなく、「使う場所」と「使い方」の秀逸さにあると言えよう。なお、衣装はシンプルだが、古代ギリシャの雰囲気もなくはないが、むしろ時代を超えた象徴的な印象だ。このほか、エウメーテのミニチュアの家と羊を登場させたり、細かいところでのユーモアセンスも冴えわたる。

●歌手の方々の話もしなければならない。このオペラは実に役が多い。ソリストだけで17人もいる。そして、その17人が全員文句なく上手いのだ。ウリッセ役のエミリアーノ・ゴンザレス=トロさんは堂々たる歌いっぷりで演技力もあり、ペネローペ役の湯川亜也子さんは凛として気品にあふれ且つ憂いを帯びた雰囲気は王妃にぴったり、ミネルヴァ役のクリスティーナ・ファネッリさんはチャーミングで表現力も豊か、テレーマコ役のケヴィン・スケルトンさんは歌唱も素晴らしいがダンスもプロ並みでびっくり、メラント役のマルチド・エティエンヌさんは明るく陽気でおちゃめな役柄を好演、イーロ役のフルヴィオ・ベッティーニさんはコミカルな持ち味を存分に発揮した。もちろんそのほかの方々も本当に素晴らしい。バロックが得意な歌手がここに大集合した感がある。

●最後となったが、寺神戸亮さんが率いる古楽器アンサンブル、レ・ボレアードの演奏は絶品だ。歯切れよくリズミカルな演奏に、気分は完全にモンテヴェルディの世界。感謝の気持ちでいっぱいだ。

●来年の北とぴあ国際音楽祭では、何とヘンデルの「リナルド」が上演されるとのこと。今からとても楽しみだ。

以上

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