加藤浩子さん講座「ドイツの歴史とワーグナー(第2回)」(学習院さくらアカデミー)を聴講する

●2018年10月13日(土)、加藤浩子さんが講師を務める講座「ドイツの歴史とワーグナー」(学習院さくらアカデミー)の第2回目を聴講した。今日は《タンホイザー》を採りあげる。同作品は来年早々新国立劇場で上演されることもあり、とても関心があるもの。

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●今日配布された資料は、①「《タンホイザー》のあらすじ、登場人物の解説」、②「《タンホイザー》」の背景~中世ドイツの伝説とワーグナー」の2点。これらを適宜参照しつつ、レクチャーが進められていく。

●まず冒頭で、ヴァルトブルク城の全景のスライドを見る。ここは、マルティン・ルターがザクセン選帝侯フリードリヒ3世の保護の下で隠れ住み、聖書をラテン語からドイツ語に翻訳した場所として知られている。ドイツ語の聖書の普及によって、ドイツの文盲率が大幅に減ったという。ルターの文化的な面での貢献度は大きい。ワーグナーはこのヴァルトブルクを訪れ、《タンホイザー》の構想を思いついたとか。

●《タンホイザー》は3つの中世ドイツ伝説に基づいている。①「タンホイザー伝説」、②「ヴァルトブルクの歌合戦伝説」、③「聖エリザベート伝説」だ。以下、加藤浩子さんが配布資料に基づき、その要点を説明。

①タンホイザー(1200頃~1267頃?)は、13世紀に実在したミンネゼンガー(騎士歌人)で、従来のしきたりに囚われない官能的な歌を得意にしたとのこと。

②ヴァルトブルクの歌合戦は1207年に実際に開催されたもの。《タンホイザー》に登場するミンネゼンガーの殆どが実在の人物。その一人オフターディンゲンは過激な内容の歌を歌ったとして処刑されかけたが、《タンホイザー》の主人公は、このオフターディンゲンとタンホイザーを一体化し創作した人物像。

③エリザベート(1207~1231)は、領主ヘルマンの息子ルードヴィヒ4世に嫁いだハンガリーの王女。20歳の時、十字軍に従軍していた夫が戦死した後、彼女は城を出て慈善活動に励み、24歳の若さで世を去った。1235年に列聖。ワーグナーはこのエリザベートをオペラに転用し、タンホイザーを救う恋人とした。さすがワーグナーならではの創作である。

●続けて、ヴァルトブルク城内部のスライドも見る。ドイツ学生同盟結成の間(ま)やルターが匿われていた部屋等、どれも興味深い。

●ドイツ統一に際し、ドイツ語はドイツ人にとって強力な武器となった。既に神聖ローマ帝国下で概ね言葉が共通となっていたからだ。文化復興運動の一環として、グリム兄弟はドイツ民話集を編纂する。ワーグナーが生きた時代もそのままドイツ統一の時代。彼は、ドイツ歴史上の有名なタンホイザーを選んでオペラ作品化したが、当時のドイツ統一に向けての意識と無縁ではない。との説明。なるほどなるほど。

●ここで、序曲を映像で視聴する。ここにはオペラのメインテーマである「巡礼の動機」と「ヴェーヌスの動機」の双方が現れる。ワーグナー作品で序曲が独立した形態をとるのは《タンホイザー》が最後とのこと。この映像(イヴァン・マルコ演出)では、序曲の演奏中、舞台上では、巡礼者たちが歩き回ったり(巡礼の場面)、男女たちが古代ギリシャのバッカスの祭りを思わせるように激しく抱き合ったりしている(ヴェーヌスの場面)。タンホイザーが劇中で快楽の場面を思い出すとき、後者の音楽が奏でられることに。やっぱりそうなのか。

●次の映像は、歌合戦の開始を告げる「大行進曲」。舞台に作られた大きな円形の会場に次々と入場し整列する騎士や貴婦人たち。「アイーダ」の凱旋行進曲を彷彿とさせる。確かにワーグナー作品にはグランド・オペラとの類似点がある。《タンホイザー》は、完全にドイツの材料のみを使った作品であるという点で、ワーグナーにとってターニングポイントとなったとのこと。直前は「彷徨えるオランダ人」。確かに分かり易い。

●続いて待ちに待った「歌合戦のシーン」。領主ヘルマンの「愛の本質は何か」との問いに対し、ヴォルフォラムは竪琴を小脇に抱え朗々と「精神的な愛」を歌うが、タンホイザーはこれを否定し、「快楽」を主張し聴衆の反感を買ってしう。この後、何回かの歌の応酬があり、ついにはタンホイザーが「ヴェーヌス賛歌」を歌ったことから、とうとう追放処分を受けることに。こうした一連の歌のやり取りは本当に面白く、親しみやすい。

●最後は感動的なラスト・シーン。苦難のすえローマに辿りつくも教皇から許されず破門され、自暴自棄になったタンホイザー。ヴェーヌスの誘惑に心を奪われそうになるが、ヴォルフォラムが懸命に引きとめようとする中、折しもタンホイザーのために自ら犠牲となったエリザベートの葬列に出会う。タンホイザーは彼女の亡骸に寄り添い息絶えるが、魂は救済される。映像の演出もシンプルで美しく、壮大で厳粛なラストであった。

●私はまだまだオペラ鑑賞ビギナーだが、ワーグナーは他の作曲家の作品に比べて劇場で観た回数が極端に少ない。「芸術性」を主張しすぎる作風に若干の違和感(傲慢さ?)を覚えるのと、ナチスによる政治利用(ワーグナーの責任ではないが)への嫌悪感がその理由かも知れない。しかし、今回の講座を聴講して感じたのは、ワーグナーは全然難解ではなく、むしろ分かりやすいということ。私のワーグナーに対する見方が変わりそうな予感がした。

以上



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