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zoom RSS 映画『ゴッホ 最後の手紙』を観る

<<   作成日時 : 2017/11/17 22:26   >>

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●2017年11月3日(金)、自宅近くのTOHOシネマズ流山おおたかの森で、映画「ゴッホ 最後の手紙」(監督/脚本:ドロタ・コビエラ)を観た。ストーリー的にも、ヴィジュアル的にも、とてもユニークなので、美術ファンでも映画ファンでも、十分楽しめる映画だと思う。両方のファンを自認する私は、とても気に入った。

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●波乱に富んだ人生を送った芸術家は枚挙に暇(いとま)はないが、オランダ出身の天才画家フィンセント・ファン・ゴッホ(1853〜1590)も、その例外ではない。彼は生涯で800点もの作品を残したが、実弟であるテオの努力にも関わらず、生前売れたのは僅かに1点のみ。現在のような揺るぎない名声を得るのは死後のことである。

●まずは、ゴッホの生涯をざっとおさらいしておこう。ゴッホは、オランダ南部、ベルギーとの国境にほど近いブラバンド地方で、牧師の家に生まれた。16歳の時、美術商として成功した伯父が経営する会社に入社し、ロンドン支店等で働くが、接客能力がないとして解雇されてしまう。教師や書店員をした後は、意を決して父親と同じ牧師を志すも、学力不足で神学校入学を断念。やむなく、次は極貧の炭鉱地帯の教会で伝道師として活動するが、「あまりに宗教的(すべてを炭鉱夫たちに分け与えた)」との理由で職を追われる。本格的に絵を描き始めるのは、この後、何と28歳の時。正式な美術教育を何ら受けないまま、「全くの独学で」である。しばらくしてパリに出るが、画家仲間と馴染めず、南仏のアルルに移り住む。ここで借りた「黄色い家」でゴーギャンとの共同生活を始めるが、すぐに破局。あの有名な「耳切リ事件」が起きるのだ。精神病院での治療を受け、退院後は、精神科医のガシェ医師が住むオーヴェールの宿に逗留する。ところが、僅か10か月後のある日、ゴッホはピストル自殺を図り、自ら37年間の波乱の生涯を閉じることとなる。ということは、画家としての実働時間は僅か9年間。何と凝縮された人生なのだろう。ジャンルこそ異なるが、モーツァルトと同等かそれ以上の密度の濃さと言うべきか。

●ゴッホの突然の死については、自殺説が定説だが異説もあり、今だ謎に包まれている。この映画は、観客とともに、このゴッホの死の真相に近づいて行こうとする挑戦的な試みであり、物語は、サスペンス風としか言いようがないような異様な緊張感を持続させながら、スリリングに展開していく。登場人物は、もちろん全員実在の人物だ。

●ゴッホには、ルーランという郵便局長の友人がいた。彼の手元には、ゴッホが弟のテオに送るはずだった一通の手紙(結果的に最後の手紙になった)が残されており、息子のアルマンに、本人に手渡すよう託す。さっそくアルマンは、パリに赴きテオの消息を辿るが、タンギー爺さん(画材屋)から、すでに他界していることを聞かされた。そこで、ゴッホの最後の地となったオーヴェールに向かうことにする。アルマンは、この地で、いろいろな関係者を訪ね、ゴッホの生活ぶり、死亡時の状況等を聞いて回る。精神科医ガシェ、その娘マグリット、その家政婦、宿の娘アドリアーヌ、死亡鑑定したマゼリ医師、警察署長等々。ところが、彼らの言うことは、矛盾することもあれば符合することもあり、真相に近づいたかと思うと遠ざかり、遠ざかったかと思えば近づく。まるで、芥川龍之介の「藪の中」のような具合。果たして、アルマンは、謎を解き明かすことができるのか?

●こうしたストーリー展開での面白さに加え、この映画の最大の特徴として「動く油絵」とも言うべき驚異的な制作手法を挙げなければならない。まず、俳優がセットまたはグリーンバックの中で演技し、これを撮影した「実写映画」を特別なシステムでキャンバスに投影。これに基づき、特訓を受けた絵画スタッフ(125名)が、ゴッホの筆致や色調そっくりの油絵を描く。その数、何と62,450枚(12枚/分)。これを連続して映すことで「動く油絵」が出来上がる。ざっとこんな手順だ。

●確かに、演技する各俳優はゴッホが残した肖像画の人物と雰囲気がよく似ており、背景もゴッホの絵の背景と酷似していて、スクリーン上の映像は、まさに「動くゴッホの絵」そのもの。ゴッホの絵にさほど詳しくない私でさえ、「夜のカフェテラス」等、何点もの作品を思い起こされたのだから、詳しい方なら、もっと楽しめたと思う。

●なお、以下は、ゴッホの絵ではなく、この映画の一コマである。そのクオリティの高さに驚かれるに違いない。

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●私は、映画ならどんなジャンルでも大好きだが、この映画は、映画の持つ新たな可能性、言い換えれば、映画が表現できることの幅と深さに関して、更にもう一歩前に進めることができるということを、文字通りヴィジュアルに示してくれたのだと思う。是非機会あれば、ご覧いただきたい作品だ。

以上

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