NHK BSプレミアムでオペラ公演『ドン・ジョヴァンニ』(モーツアルト)を観る

●2011年12月26日(月)、午前0時から、NHK BSプレミアムでオペラ公演『ドン・ジョヴァンニ』(モーツアルト)を観た。『ドン・ジョヴァンニ』と言えば、つい先日、2011年11月23日に、二期会公演を観たばかりだが(その時の記事はこちら)、オペラは演出や出演者によって、全然印象が異なるので、何度見ても楽しい。今回の公演は、超一流のメンバーによるもので、しかも、ごく最近収録されたもの(収録日:2011年12月7日)。明朝は寝不足でつらくとも、見ないわけにはいかない。
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●言わずと知れた、稀代のプレーボーイ「ドン・ジョヴァンニ」の話。2000人以上の女性を口説き落とした強者だ。ドンナ・アンナに部屋に忍び込んだが、騒がれて、駆け付けた父親の騎士長を殺してしまう。かつて捨てた女性のドンナ・エルヴィーラには追いかけられる。結婚式目前の新譜ツェルリーナにもちょっかいを出す。次第に、悪行が皆の知れ渡ることになって、追いつめられていくき、最後は、殺した騎士長の石像によって地獄に落とされるといったストーリー。モーツアルトのオペラとしては、珍しく悲劇的要素を含むとも言えるが、いわいる悲劇とは全く異なる一種異様な趣き。

●まずは、メンバーを確認しておこう。出演、演奏、指揮とも、申し分ない組み合わせだ。

<出 演>
(ドン・ジョヴァンニ)ペーター・マッティ
(騎士長)ヨン・クワンチュル
(ドンナ・アンナ)アンナ・ネトレプコ
(ドンナ・エルヴィーラ)バルバラ・フリットリ
(ドン・オッターヴィオ)ジュゼッペ・フィリアノーティ
(レポレルロ)ブリン・ターフェル
(ツェルリーナ)アンナ・プロハスカ
(マゼット)シュテファン・コツァン

<演 奏>
(合 唱)ミラノ・スカラ座合唱団
(管弦楽)ミラノ・スカラ座管弦楽団
(指 揮)ダニエル・バレンボイム

<収 録>
2011年12月7日 ミラノ・スカラ座(イタリア)

●舞台装置は、「斬新」の一言に尽きる。序曲が始まり、まず舞台に現れるのは、全面の鏡状の幕。観客席や天井の微かなライトが写りゆらゆらと揺れている様子は、何とも幻想的。この後、各場面に登場するのは、舞台の幕のような絵柄を描いた巨大な衝立(ついたて)状の物。これ以外に、具体的な調度類はほとんど出てこない。この衝立が、何層にも重なり、あるいは扉や窓が開いたりして、各場面の物理的な状況を表していく。カタログの歌に登場するリストは、ノートでも紙でもない。何と、衝立を裏返しすると、一面に無数の印が付けられているのだ。マゼットとツェルリーナの結婚式の場面は、衝立の前に並べられた飾り気のない椅子。第2幕のドンナ・エルヴィーラの熱唱の場面では魔法のように見事な奥行を創り出す。そして圧巻なのは、騎士長の石像が、再び登場した鏡状の膜の上に現われるこころ。観客席後方中央に立つ騎士長の石像が写っているのだ。シンプルにして、表現力に溢れた素晴らしい舞台装置と言える。

●出演者の見事な役作りと歌いっぷりには、本当に脱帽だ。ドン・ジョヴァンニ役のペーター・マッティ氏は、いわいる悪(わる)といった感じでなく、むしろ爽やかさすら感じられるほど。でも、こうしたキャラこそ、女性にとっては要注意かも(笑)。でも、エルヴィーラの小間使いを誘惑し裸にしてしまうのはやりすぎでしょう。レポレルロ役のブリン・ターフェル氏は、顔つきといいでっぷり太った体型といい、悪意はないが小心でちょっと品の無いおじさんで私のイメージにぴったり。「カタログ」の歌は正に絶品であった。ツェルリーナ役のアンナ・プロハスカさんは、ちょっと異色のツェルリーナかもしれない。外見も仕草も「可愛い」と「可愛くない」のぎりぎりで微妙な線上にいる感じ。ボコボコにされたマゼットに駆け寄り、有名な「薬屋の歌」を歌う場面では、思い切り、マゼットを蹴ったりしてびっくり。このほか、ドンナ・アンナ役のアンナ・ネトレプコさんは声量抜群、ドンナ・エルヴィーラ役のバルバラ・フリットリさんは演技力抜群などなど・・・。

●指揮するダニエル・バレンボイム氏は、私がクラシック音楽を聴き始めた1960年代は、若手のイケメン・ピアニストだった。今でもその印象が強いが、1990年代からは、指揮者としての名声も確固たるものにしたという。本公演においても、ダニエル・バレンボイム氏の指揮が素晴らしいのは疑う余地はないと思う。現在69歳。指揮者としては、バリバリの現役と言える。なお、ダニエル・バレンボイム氏は、アルゼンチン出身。ユダヤ系ロシア人を両親に持ち、現在はイスラエルに住む。しかし、ユダヤ人にとってタブーともいうべきワーグナーやR・シュトラウスの曲を積極的に演奏したり、パレスチナ寄りの発言をしたり、イスラエル政府の反パレスチナ政策を批判したりと、その言動は、結構話題を呼んでいる。芸術家と政治が無縁でないのは、いつの世でも同じだ。

以上


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