イキウメ『太陽 THE SUN』を観る

●2011年11月12日(土)、青山円形劇場(表参道)で、劇団イキウメの公演『太陽 THE SUN』を観た。とても面白い。シリアス且つファンタジック、不思議な魅力を持つ作品だ。
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●「イキウメ」は、2003年に旗揚げされた劇団。主宰は前川知大(まえかわともひろ)氏。作・演出も手がける前川氏の作品は、「身近な生活と隣り合わせに異界が現れるスリリングな世界観を特徴とし、日常に潜むセンス・オブ・ワンダーを描く」とされている。私は、今年5月の前回公演『散歩する侵略者』I(シアタートラム)を観て、すっかり魅了されてしまった(この時の記事はこちら)。今回も期待を裏切らない。

●まずは、メンバーを確認しておこう(敬称略)。

◆作・演出:前川知大
◆出演:浜田信也、盛隆二、岩本幸子、伊勢佳世、森下創、大窪人衛、加茂杏子、安井順平 有川マコト

●物語の舞台は、近未来の日本。40年前に起きたバイオテロによりウィルスが世界中に拡散、多くの人が犠牲になり人口は激減した。だが、感染者の中で奇跡的に回復した人々の身体には著しい変異が起きていた。彼らは、明晰な頭脳を持ち論理的思考に優れ、肉体的な老化からも解放されているが、紫外線に極端に弱いので、太陽光を避けもっぱら夜間に活動する。自らを「ノクス」(夜に生きる人)と称し、都市に住み、社会において指導的な立場にある。一方、普通の人間は、四国を割り当てられ多くの者が移住したが、今なお、住みなれた地域を離れず、細々と生活する者もいた。ノクスたちは、普通の人間を「キュリオ」(骨董品)と蔑称で呼んでいる。

●公演は未だ当分続く(東京:~11月27日、大阪:12月2~4日)。ネタばれ懸念があることは書けないので、本公演の魅力やみどころについて、以下、総論的なことを、ざっくりと述べるにとどめておこう。

●本作品は、まぎれもなくSFである。バイオ技術の発展の先に到来する荒廃した世界を描くことで、同技術が孕む底知れぬ危険性を広く伝えようとするもの。そういう点では、テーマは若干ありきたりとはいえ、至極真っ当なものと言える。しかし、この作品の本当の面白さは、別のところにあるように思う。

●優劣があるとされる2つの集団が存在する。各々の集団に属するメンバーは他の集団に属するメンバーにどのような感情を抱き、どのような態度で接するのか。差別する者と差別される者、優越感と劣等感、優越感に根差した独善性・偽善性、劣等感に根差した反感あるいは服従・妬みなど、これらを、極めて具体的且つ象徴的に表現しているのだ。それだけではない。その集団間の優劣とは、決して絶対的なものではなく、視点や価値観によって、変わり得るものであることをも示唆してる。劇の最後で語られる「ノクスは××だ」という一言(××は見てのお楽しみ)、そして作品タイトルの『太陽』こそが、このことを端的に示していると言えよう。

●出演者は、皆、個性的で且つ演技が抜群に上手い。演技を全く感じさせないほどだ。前川氏が俳優各人の個性を最大限に生かした脚本を書いているのか、俳優各人の演技力レベルが著しく高いのか。多分、その両方なのであろう。中でも、鉄彦役を演じた大窪氏の存在感は群を抜いている。前回公演の『散歩する侵略者』でも強く感じたが、彼の「過激にしてナチュラル」な演技には、全くもって脱帽だ。

●場面転換の手法も見事というほかない。場面から場面への展開の際に、一方の場面の登場人物たちが動く間、一方の場面の登場人物たちは存在しないかのように静止している。そこに全く違和感がない。演じる側と見る側との間の約束事が、極めて自然に成立しているのだ。

●イキウメは、SFなど一定の表現方法をとりながらも、その枠に留まらず、優れた脚本、見事な演出、優れた演技を通じて、観客の想像力を最大限刺激しながら、実に多くのことを語ることができる稀有な劇団である。早くも次回の公演が待ち遠しくてならない。

以上

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