千賀ゆう子企画公演『猫とカナリア・・・と?』を観る

●2011年7月3日(日)、こまばアゴラ劇場(駒場東大前)で、千賀ゆう子企画の演劇公演『猫とカナリア・・・と?』を観た。この公演は、「理生さんを偲ぶ会」が主催する「第5回岸田理生アバンギャルドフェスティバル」への参加作品の一つ。何とも不思議な体験をしたというのが正直な思いだ。
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●岸田理生さん(1946~2003)のことは、実は私はあまり詳しくはない。劇作家・怪奇幻想小説家として名前を知っていた程度だ。そこで略歴を確認してみると、1974年、寺山修司氏の劇団・天井桟敷に入団し、寺山との共作で、数々の戯曲を執筆。1983年には岸田事務所+楽天団を結成し、同年上演の『糸地獄』で第29回岸田國士戯曲賞を受賞。1988年には『終の栖仮の宿』で第23回紀伊國屋演劇賞を受賞。怪奇幻想的な作風の小説家としての顔も持つ。1993年より岸田理生カンパニーを主宰するが、難病に倒れ、長い闘病の末に2003年永眠、とある(WIKIPEDIA、当日配布パンフ等)。 彼女を偲ぶこの企画がすでに5回目を数えるというのだから、生前は、小劇場活動の旗手の一人として周囲に強い影響を与え、また多くの人に慕われていたに違いない。

●千賀ゆう子企画とは、文字通り、千賀さんご自身が企画し、構成、演出、そして出演する実験的な演劇を展開している団体。これまでの上演記録を見ても、岸田理生さんと深い関係があることが分かる。

●今回の作品のテキストである『猫とカナリア』(原作)は、千賀ゆう子企画に書き下ろした戯曲で、1990年に大杉漣、陰山泰、梶原秀子、千賀ゆう子により上演されたもの。今回の『猫とカナリア・・・?』は、原作を主要テキストにしつつも、開かれた即興劇として全く新たに再構築したもののようだ。

●出演者は、俳優として、原田拓巳、佐藤和加子、川島むー、清水周介、加藤翠、木舘愛乃、杉村誠子、山本ありす、鶴山欣也、千賀ゆう子、野田光太郎、そして楽士としてチェロの入間川正美が演ずる(敬称略)。原田氏と鶴山氏は舞踏家、野田氏は何と新体操の全日本個人総合優勝者だ。

●楽士を除く出演者は、全員黒い服を着ており、女性は皆赤い靴を履いている。ストーリーらしいストーリーはない。しかし、夫婦、恋人間の四角関係、そこに渦巻く愛憎を描こうとしていることだけは分かる。彼らは、ステージ上を忙しく動き回るが、いわいる台詞らしい台詞は発しない。台詞を全ていったんバラバラに解体し、その一つ一つが、音として新たな意味を与えられ宙を舞っているような感覚に陥ってしまう。4人以外の登場人物が発する声は、ギリシャ劇のコロスのようにも聞こえる。ときおり見せるダンスのようなパフォーマンスも興味深い。さすがに舞踏や新体操の専門家を招いただけのことはある。ストーリーは明確でなくとも、言葉の響きと体の動き、そして終始バックに流れるチェロの音(ね)だけで十分楽しめるのだ。  

●小道具の使い方もユニークだ。なかでも、「箸」がとても効果的に使われている。食事、すなわち日常生活そのものを象徴しているのであろうか。最後の、ステージ上に散乱した箸を鳥かごに入れていくシーンには強烈なインパクトがあった。色彩も印象的だ。女性たちが履く赤い靴、ステージ中央に突如敷かれるレッドカーペットなど、黒い服との対比がとても鮮やかだ。

●千賀ゆう子企画が創造する演劇。それは、まさに不思議な象徴の世界だ。この作品を観ていて、演劇とダンス・パフォーマンスとの距離は、私が想像していた以上に近い、いや既にオーバーラップしていて、区別すること自体が意味がないようにも思えた。

以上

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