SPIRAL MOON 『惑星のピクニック』を観る

●2011年6月18日(土)、下北沢「劇」小劇場で、SPIRAL MOONの演劇公演『惑星のピクニック』を観た。社会問題を鋭くえぐる芝居でもない、スリリングな展開がある芝居でもない、腹を抱えて大笑いする芝居でもない、でも見終わった時に、心から「本当に良い芝居を見た」と感じさせる味わい深い素晴らしい作品であった。
画像

●SPIRAL MOONとは、秋葉舞滝子(2008年7月に秋葉正子より改名)さんが、1997年に設立した演劇製作ユニット。演出は秋葉さんが行い、公演ごとにベストマッチの役者をキャスティングしているとのこと(劇団HP)。今回の公演(当劇団では、セッションという)は、なんと24回目となる。

●まずは、主だったメンバーを確認しておこう。
◇作  乾 緑郎
◇演出 秋葉舞滝子
◇出演 牧野達哉(店主)、辻崎智哉(店員、岩井太郎(インタビューの男)、山本真嗣(食器コレクターの男)、為平康規(ペプシ・コーラの男)、南雲則治(火星風邪の男)、秋葉舞滝子(万引き女)、最上桂子(店主の妻)

●物語の舞台は、とある惑星の雑貨屋。この惑星にはかつて有用な地下資源が眠っていると信じられ、採掘のため多くの地球人が移住してきた。この雑貨屋も採掘労働者が必要とするものをいろいろ売ってきた。結局、ここにある地下資源は今では大方掘りつくし、しかもそれも大して価値があるものではなったが、今でも、移住してきた者の子や孫が暮らしている。この雑貨屋も、今の店主の祖父が開いたものだ。なお、この惑星には、地球人のほか、見た目はイナゴそっくりだが、彼ら間での独自のコミニュケーション能力を持つ知的生物もいる。地球人は、彼らのことを「イナゴ」とも「ネイティブ」とも呼ぶ。

●ある男が、店主や客をつかまえては、テープレコーダをテーブルに置いてインタビューをしまくっている。一人一人から聞いた話を集め、それらの視点からこの惑星の歴史を書き上げるのが目的らしい。ここで語られる話は様々だ。そして、インタビューをする男の意図をはるかに超えて、一人一人が心の中にしまっていた過去への思いが明らかにされ、観客は彼らとともに時間を遡って行く。しかも、その過去への思いは、現在にそのまま色濃くつながっているのだ。店主が3日間店を休んで妻と行ったピクニックでいったい何が起きたのか。なぜ最愛の妻と別れることになったのか。女は、少女時代からなぜ万引きをするようになったのか。そして、当時の店主(=今の店主の祖父)とその少女は何を語り合ったのか。共通するのはネイティブの言葉。語られた過去は相互に交差しつつ思わぬ事実が浮かび上がる。

●この作品から感じ取れること、それは、「懐かしさ」であり、「優しさ」であり、「時間の流れ」とそれに伴い痛みを持って想起される「喪失感」。チラシにも書かれ、また店主が言う「ああすればよかった、こうすればよかった。そんな思いばかりが幽霊のように渦巻いている。こんなこと、見も知らぬ遠い星の物語であればいいのに」という言葉に集約される思いだ。確かに、人は皆、多かれ少なかれ、こうした思いを引きずりながら生きているのだろう。ただ、私は、この作品において、微かながらも希望は示されていたように思う。

●出演者は、皆、演技が素晴らしく個性的だ。しかも小さい劇場だけにその魅力がダイレクトに伝わってくる。秋葉さんのきめ細かな演出が、その魅力を更に高めているのだろう。私は最前列に座っていたが、文字通り、ステージ上の出演者と同じ空間にいると強く実感した。店主が吸うタバコの匂い。この匂いの共有こそ、このことを端的に象徴している。役者としての秋葉さんの存在感も圧倒的だ。あの小柄な体からは特異なオーラが発せられ、そこに秘めるエネルギーには凄味さえ感じられる。

●SPIRAL MOONの芝居には、今後も是非足を運びたいと思う。

(以下余談ですが)

●SPIRAL MOON公演のチラシ画は、秋葉さんの妹さんの秋葉陽子さんが描かれたものだ。秋葉陽子さんは、芸大日本画科を出られ広く活躍されている著名な作家だ。とても繊細で美しい絵を描かれる。なんと才能豊かな姉妹なのだろう。今日、私の席の後ろに座っておられたのは、たぶん秋葉陽子さんではないかと思う。

以上

--------------------------------------------------------------------------------

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!

ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。

→ログインへ

なるほど(納得、参考になった、ヘー)
驚いた
面白い
ナイス
ガッツ(がんばれ!)
かわいい

気持玉数 : 0

この記事へのコメント

この記事へのトラックバック